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2019.06.21 07:00  週刊ポスト

トリの三遊亭白鳥ほか新作オンパレードで味わう寄席の醍醐味

 夜の部は新作派がズラリと並ぶ顔付けで、古典を演じたのは橘家文蔵(『夏どろ』)と橘家圓太郎(『浮世床』)のみ。三遊亭青森の高校野球部ネタ『仰げば尊し』に始まり、三遊亭天どんは松田聖子という名のオジさんを訪問する『有名人の家』、三遊亭丈二は人材不足のヤクザがバイトを雇う『極道のバイト達』、古今亭駒治は新幹線を舞台に女の闘いを描く『車内販売の女』、柳家小ゑんは不条理系の圓丈作品『フィッ!』、林家彦いちは「人に翼がある」並行世界から来た落語家が主役の『つばさ』と、それぞれユニークな作品で楽しませてくれた。こういう番組は寄席の醍醐味が味わえる。

 白鳥の『黄金餅池袋編』は池袋の貧乏アパートに住む金銀亭Q蔵という売れない落語家が主役の噺だ。

 Q蔵の隣室に住む北朝鮮の工作員の婆さんが、大量の金粒をトック(韓国の餅菓子)に包んで呑み込んで死ぬ。自分の遺体ごと祖国に密輸するためだ。だがQ蔵は同じアパートの中国人・楊の手引きで闇のシンジケートの火葬場で遺体を焼き、金を奪おうと企む。古典『黄金餅』を下敷きにした設定だ。火葬場まで遺体を運んでいく道中付けもある。

 着いた先はなんと池袋演芸場。闇の火葬場を仕切るのは演芸場の番頭だった。だが番頭は「この金を手に入れたらお前は堕落する。悪事に手を染めたりせず、お前は自分の貧乏体験を落語に活かせ」とQ蔵を諭し、金はちゃっかり自分と楊とで山分けに。心を入れ替えたQ蔵は、この事件の顛末を江戸時代の架空の噺として作り変えて人気を博し、七代目三遊亭圓生を継ぐことに……。

 20年前に作ったという小ネタ満載の『黄金餅池袋編』。傑作だ。

●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。

※週刊ポスト2019年6月28日号

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