ちなみに稲尾と杉浦の2人はこのシリーズだけでなく、シーズン中も投げまくっていた。その影響かどうかはわからないが、6年目に78試合登板で42勝という空前絶後の記録を作った“鉄腕”稲尾は27歳の9年目に肩を壊し、プロ3年間で96勝を挙げた杉浦は26歳の4年目に動脈閉塞を患い、思うようなピッチングができなくなった。
エースと2番手投手にどうしても差が出てしまいがちな高校野球は、昭和30年代のプロ野球のスタイルを未だに続けている状態だ。この状態がいつまで続くのか、国保監督の佐々木温存作戦は、高校野球の在り方に一石を投じたと言えるだろう。
●文/岡野誠:ライター・データ分析家・芸能研究家。研究分野は松木安太郎、生島ヒロシ、プロ野球選手名鑑など。著書に『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)がある。