国保監督の起用法に賛否の声(撮影/藤岡雅樹)

 そう話すのは昨夏、60年以上に及んだ高校野球の指導者人生にピリオドを打った83歳の豊田義夫氏だ。1965年に近大附属(大阪)の監督に就任し、3度のセンバツ出場に導いた。当時は「キンコーの鬼」の異名と超スパルタ指導で知られたが、50以上も年下の国保監督を「尊敬しますね」と評す。

「僕はエースと心中する野球しかできなかった。幸いなことに、酷使した教え子が大学やプロで潰れた経験はありませんが、休ませる勇気がなくて連投させていた。ただ、佐々木君が投げずに負けて、他の選手に悔いが残ったのではないか」

 一方、球児たちの「卒業後」を見てきた指導者は、少し見解が異なる。ソフトバンクなどで投手コーチを務めた杉本正氏は、1998年夏に767球(6試合)を投げて横浜高校を春夏連覇に導いた松坂大輔(現・中日)が、翌年プロ入りした時の西武の投手コーチだった。

 その杉本氏は「甲子園に行けないことより、佐々木君を壊すほうが怖いと思ったのでしょう」と国保監督を慮った上で、こう続ける。

「僕の経験でいえば、むしろ高校時代に球数を投げていた選手のほうがプロで活躍する印象があるから難しい問題です。松坂もそうだし、東尾修さん(箕島高、1968年春ベスト4)も高校時代から投げ込んできたから200勝できたと言っている。一方で権藤博さんは、プロになってからの話ですが、新人の年からの登板過多がなければもっと勝てたと話していました。

 一概には言えないわけですが、僕は球数を投げないと投手の肩は作れないと思っている。若手にもそう指導してきた。コーチとして見てきた元横浜の三浦大輔や楽天の則本(昂大)も、投げ込んで仕上げ、結果を出してきた。ただ、最近の若い選手はプロになっても球数を投げようとしませんね。先発投手も6回100球になったら降板という時代だからでしょうか」

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