果たして、曲中に笑い出す空前絶後の『ブギ浮ぎI LOVE YOU』を他の歌手が歌ったら売れただろうか。田原俊彦が歌うと不思議とサマになった。製作陣が個性を引き出す歌を作り、歌い手が懸命に表現する。こうして、唯一無二の存在が確立されていった。

 当時、若いタレントを“ジャリタレ”と蔑視する声もあった中、ジャニー氏はこんな夢を持っていた。

〈ぼくはジャリタレで終わらせようと思ってやってないんです。アメリカの芸能界のように、みんな5歳くらいからレッスンにレッスンを重ねて、40代、50代で円熟期を迎えて、老人になっても活躍してるようなアーチストを作りたいんです〉(平凡・昭和62年11月号)

 平成元年10月22日、田原は横浜アリーナで行なわれた『レーガン前大統領夫妻来日記念特別企画フレンドシップコンサート』に出演し、『抱きしめてTONIGHT』などのメドレーを約10分間にわたって披露した。アメリカのショーをお手本にしてきたジャニー氏にとって、望外の喜びだったはずだ。

 デビューから10年間、37作連続でオリコントップテン入りという記録を樹立した田原は、確実にアイドルの寿命を延ばした。

 ジャニーズ事務所はティーンエイジャーが輝く場所と考えていた田原は33歳になる平成6年、独立を決意。初代グループのジャニーズやシブがき隊などは20代で解散後に事務所を離れており、当時は30歳過ぎて在籍しているタレントは稀有だった。

 独立後、田原のメディア露出は徐々に減っていった。それでも、デビュー30周年を迎えた平成21年発売の自伝『職業=田原俊彦』を始め、今まで幾度となく恩師への感謝を述べている。

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