◆強盗は出来レース
野口が手記で主に綴るのは、金塊強奪事件の顛末である。事件の始まりは後輩からの一本の電話だったという。
〈「実は、僕の知り合いが、あることをしてほしい……と頼んで来てるんですけど、それというのが、金塊を持ち去ってほしいという事なんですけど……」
(中略)
問いただすと、後輩は続ける。
「金塊を盗まれたという名目が欲しいらしくて、税金対策で……とか言ってるんですよ」〉(手記より引用。以下〈 〉内同)
突拍子もない話に困惑する野口だったが、「金塊の持ち主A氏とはすでに話が付いている」と断言する後輩を信用。持ち去った金塊は自分たちの物になるという条件に誘われ、2016年7月8日、指示されたビルに車で向かい、金塊の入ったキャリーケースを受け取って車に積み込んだ。
野口は、強盗は双方同意の上での“出来レース”だったと主張するのだ。そして金塊から換金した金を元に、詐欺に巻き込まれていったと綴る。