女優・白石聖さんの魅力とは、ちょっと頼りなさそうでいて、実は強い芯を感じさせる奥行き感にあります。ドラマ『絶対正義』では山口紗弥加演じる高規範子の高校時代と範子の娘の二役をこなし、狂気じみた演技で話題になりました。冷たい瞳は怖いほどで、相手を追い込む「正義のモンスター」になりきっていました。負のパワーが炸裂していて「この女優さんいったい誰?」と強く印象に残ったのです。
その白石さんが、今回の地下アイドル役で、思い切り花開いています。地下アイドルと推す人。「チェキ会(特典会)」に「ループ(何度も列に並ぶ)」、「MIX(イントロに乗せるコール)」と、すぐには理解できない「オタク専門用語」がズラリ並ぶ世界。ちょっと近寄りがたいけれど、本質をよく考えると大相撲や歌舞伎のタニマチや大向こうと、さほど変わらないのかも。歌舞伎役者に向かって「成田屋!」「高麗屋!」と声をかけるのも、コールの一つと言えるかもしれません。
つまり、人は誰かを応援したい。それによって自分自身を確かめたい。自分の居場所を作りたい。愛を与え個人的見返りは求めないという美学に酔いしれたい。『だから私は推しました』は、そんな「特殊性」と「普遍性」とが上手に織り合わさった秀逸なドラマです。