こうした「術後うつ」「退院うつ」は、発症してもなかなか気づきにくい。
「初期症状は『なんとなく虚しい』といった漠然としたもので、うつの兆候は非常にわかりにくい。とくに抑うつ状態になると脳の前頭前野の働きが落ち、セルフモニタリングの機能が低下するために、自分では何が原因で虚しく感じているのか、やる気が出ないのかに気づきにくいのです」(前出・茅野医師)
そこで重要になるのが、うつが悪化する前に、近くにいる家族が気づくことができるかどうかだ。家族が「手術したばかりだから多少の不調は仕方がない」と見過ごしてしまうと、取り返しのつかないことになりかねない。前出・大西教授の指摘だ。
「うつ病と診断されるのは、『抑うつ気分』あるいは『興味・意欲の低下』のどちらかがあり、さらに食欲低下や睡眠障害、焦燥感、全身倦怠感、集中困難、自責感といった症状が5つ以上、2週間連続して認められ、かつ他の原因で説明できない場合です。
術後や退院後に“眠れない”“食欲がない”といった状態を訴えたら、うつ病に罹患している可能性があると考えておくべきでしょう」
※週刊ポスト2019年9月13日号