「ラグビー部出身の経営者が多いのは確かで、インタビューすると彼らが共通して指摘するのが、“ラグビーは組織で動くスポーツ”だということです。15人という球技としては最大級の人数に、それぞれ個性ある役割が与えられる。しかも、試合が始まれば監督はその都度指示しないので、自分たちで考えてチームを機能させないといけない。ラガーマンとして培ってきたことがそのまま会社組織でも生かせると、多くの企業トップは話していました」
実際にラグビー経験がビジネスに与えた影響を公言する経営者は多く、西武HDの後藤高志・社長(東京大学ラグビー部出身)は、
〈トライを決める華やかな選手の裏に、相手に突っ込み、もみくちゃになりながらボールを獲得してくれる選手がいる。(中略)仕事も常に華やかなことばかりではない。一隅を照らし、それを尊重するカルチャーが大切だ〉(日経新聞8月16日付)
と、仕事論に結びつける。
早稲田大学ラグビー部出身で、現在は組織コンサルティングを手がける「識学」(東証マザーズ上場)の安藤広大・社長は、自身の経験からこう指摘する。
「まず、ラグビーは他のスポーツと比べて“痛い”んです。ディフェンスの場面では巨体の相手に痛い思いをしてタックルを迫られる。誰でも痛いのはイヤですが、自分がビビるとチームに迷惑をかけてしまう。“ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン”という言葉が象徴的ですが、組織のなかで責務を果たす精神が企業組織と通底しています。
また、15人のプレイヤーのチームにおける役割が決まっている。つまり、同じポジションをめぐっての争いは激しくあるが、いざ試合に出たら別の役割を担う選手とともに勝利という目標に向かって協力し合う。競合と協力の両面があるのも、現実の企業組織との共通点ではないでしょうか」