ラグビーは「心技体」のうち、「心」が重要なスポーツだといわれる。全力でぶつかってくる身長2m、体重120kgもある巨漢に対し、勇気を出してタックルに行かなければならない。怖がって腰が引けては、弾き飛ばされてしまう。
共に戦う仲間のために、チームのために。ピッチに立つチーム全員が勇気を持ち、与えられた役割を果たさなければ、どんなに強い選手を揃えても勝利できない。
2014年からキャプテンとなったリーチらが、ひとつのチームになるために取り組んでいるのが、「君が代」の練習である。当時、海外出身の選手のなかには君が代を知らない選手もいた。国の代表なのに、国歌を知らない。それではひとつのチームとしてまとまれない。そんな危機感を抱いたリーチや前キャプテンの廣瀬俊朗(37才)は「日本の繁栄を祈る歌だ」と君が代の意味を教えて、合宿中に国歌の練習を続けた。
リーチ自身も君が代をより深く理解するために、宮崎県日向市の大御神社で、歌詞に出てくる「さざれ石」を見学した。日本とはどんな国か。どんな歴史や文化を持つのか。リーチたち海外にルーツを持つ選手は、プレーだけではなく、グラウンドの外の活動を通して、日本を代表する気持ちを培ってきたのだ。
取材・文●山川 徹(ノンフィクションライター)
やまかわ・とおる/1977年生まれ。山形中央高校2、3年時に全国高等学校ラグビーフットボール大会(通称“花園”)に出場。東北学院大学法学部卒業後、國學院大學二部文学部史学科に編入。主な著書に、『東北魂―ぼくの震災救援取材日記』『カルピスをつくった男 三島海雲』『国境を越えたスクラム――ラグビー日本代表になった外国人選手たち』など。
※女性セブン2019年10月24日号