ライフ

孤食の日々、だが“ぼっち飯”が鍛えた社交術はすごかった

実は社交的な場合も!

 認知症の84才の母親を介護するひとりっ子のN記者(55才・女性)。年老いてからの孤食を心配していたが、ひとりでの食事を快適に過ごすために社交術を編み出していた!  印象深い出来事とは?

* * *
「ハムと卵のサンドイッチね。あとコーヒー。暑いからアイスコーヒーをください」

 母の通院に付き添った帰り、よく行くセルフサービスのカフェに寄った時のこと。母を先に座らせて、注文の列に並んだ私の前にいた老婦人が、慣れた様子で注文した。

 市街地のせいか昼下がりのセルフカフェは高齢者でいっぱい。壁際に並ぶ席には、新聞を広げたりボーっとしたり、渦巻のクリームがのったスイーツをうれしそうに食べたりするおじいさん、おばあさんがひとりずつ。

 高齢者の独居率が増加の一途といわれる状況を、リアルに物語る光景だ。私の前の老婦人もひとりだ。母と同年代に見えるが、遅い昼食なのか、栄養面もよく考えているのか、余計なお世話だがなかなかよい注文内容。少し背中は丸いが、しっかりした足取りで席に向かっていった。

 飲み物を買って母の姿を探すと、なんと母の隣の席には先の老婦人。サンドイッチを食べ始めたところだった。そしてそれを無遠慮に見る母。哀れみなのか、羨望なのか。

 視線に気づいた老婦人、普通なら怪訝に思うところだが、思いがけず母に笑顔を返した。

「あら、あなたもおひとりなの?」「ええ、そうよ」と、“無言のやりとり”が、2人の間に交わされた気がした。

「ひとりなので、よくここで食べるの。気楽でしょ」と老婦人から声がかかると、母は「私もそうよ! 高齢者住宅でね」と、うれしそうに返した。

 若干、かみ合っていない気もしたが、話はどんどん盛り上がっていった。意気投合したキーワードはたぶん“ひとり”。そう察した私は、なんとなく間に入りそびれ、2人を遠くから見守った。

「あの人、えらいわね。ひとりでこういう店に来て、ちゃーんと食べていて」

 結局、私が間に入って2人の会話は途絶え、老婦人が去った後に、母がつぶやいた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
「パー子さんがいきなりドアをドンドンと…」“命からがら逃げてきた”林家ペー&パー子夫妻の隣人が明かす“緊迫の火災現場”「パー子さんはペーさんと救急車で運ばれた」
NEWSポストセブン
豊昇龍
5連勝した豊昇龍の横綱土俵入りに異変 三つ揃いの化粧まわしで太刀持ち・平戸海だけ揃っていなかった 「ゲン担ぎの世界だけにその日の結果が心配だった」と関係者
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン