配られたカネが何に使われたのかわからないまま6000万円が県議らの懐に消えてしまったことになる。政治資金に詳しい上脇博之・神戸学院大学法学部教授が指摘する。
「政治資金規正法の趣旨から言えば、政党や県連から組織対策費を受け取った議員は、いったん自分の資金管理団体や政党支部に入金し、使途を報告書に記載するのが筋です。しかし、茨城県連の収支報告書を見ると、組織対策費は県議個人に支出された体裁になっている。だから議員側は報告しなくていいという理屈なのだとすれば、事実上の裏金と批判を受けても仕方ない。
受け取った議員が政治資金に使わずに懐に入れていれば個人的収入になり、税務申告しなければ脱税の疑いも出てくる。法的に非常にグレーなやり方だが、自民党本部もこの議員個人に組織活動費を支出するという手法で、年間20億円(2017年)ものカネの使途がわからないように裏金化しています」
そんな“抜け道”が罷り通れば、県議に現金を配ったとされる河井夫妻も、来年3月が締め切りの今年の政治資金収支報告書に、「組織活動費」として配った県議と金額さえ報告すれば、「適法に処理している」という言い逃れが通用することになってしまう。
政治とカネの疑惑で辞任した菅原氏の後任である梶山氏は、この疑惑に正面から答える責任があるはずだ。
梶山氏に聞いたところ、県連から「共同回答」として次のように返ってきた。
「政治資金は法令に従い適正に処理し、その収支を報告しているところです。ご質問の組織対策費も法令に従い政策の広報など、党勢拡大のための費用として支出したところです」
グレーは白と突っぱねる。なるほど、この内閣にふさわしい新大臣である。
※週刊ポスト2019年11月29日号