「引退後に背が伸びた」と語る鶴見虹子(撮影/野村誠一)

 体操を始めたのは5歳の時です。姉が習っていた体操教室に通い始めたのがきっかけで、本格的に習い始めたのは小学校4年生になってから。北京五輪への出場に導いてくれた中国人コーチの陶暁敏先生に「頑張ったらオリンピックに行ける」と言われて、「よし、頑張ろう」と。そこから毎日学校が終わった後、6時間の練習に通いました。

 小学校5年生の頃はやめたくて仕方がなくて、毎日泣いてばかりいました。1メートル以上もの高さの平均台で、難易度の高い技を練習したりするわけですから、本当に怖くって。やらないと帰れないし、失敗すると痛い。毎日が恐怖心との戦いです。ここまで頑張ったんだから今更やめられないという気力だけで、体操を続けていました。

 頑張ったかいがあって、2006年に全日本選手権で優勝できたときは嬉しかったです。一番印象に残っているのは17歳の時、2009年の世界選手権です。個人総合で銅メダル、段違い平行棒で銀メダルを獲得。体操女子の世界大会では43年ぶりのメダルとなり、私の競技人生で最高の成績を残せました。メダルは予想外でしたが、満足のいく演技ができたし、それを評価してもらえた。努力が報われた瞬間でした。

◆体操から「お芝居」へ

 4年前に引退して、いまは普通に食事ができる幸せを感じています(笑い)。選手時代は、少しでも体重が増えると体の動きが鈍くなるので、厳しい食事制限を課して、体重を一定にキープする必要がありました。でも昔から料理するのが大好き。自分で作った料理を家族にふるまうことで、食べられないストレスを発散していました。意外かもしれませんが、作るだけで心は満たされるんです。

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