国内

「しくじり世代」が京アニ放火男へと堕さないために必要なこと

11月14日、青葉真司容疑者は京都市内の病院へ搬送された(時事通信フォト)

11月14日、青葉真司容疑者は京都市内の病院へ搬送された(時事通信フォト)

「しくじり世代」とは、団塊ジュニア・ポスト団塊ジュニアに対して近著『ルポ 京アニを燃やした男』が話題の日野百草氏がつけた呼び名だ。彼らは1993年~2004年頃のバブル崩壊後の新規採用が特に厳しかった時期に新卒を迎えた就職氷河期世代であり、30~40代になった今も非正規雇用、なかでも正規を望んでいるのに叶えられずにいる割合が高い。総務省の労働力調査によれば、35~44歳人口は1679万人、そのうち非正規雇用は28.8%にものぼる。その、しくじり世代のひとりが、未曾有の大惨事となった京都アニメーション放火事件の容疑者だった。みずからも「しくじり世代」である日野氏が、容疑者のしくじりから、30~40代の生き延び方を考えた。(文中一部敬称略)

 * * *
 2019年7月18日、京都アニメーション第一スタジオに押し入り放火、36人もの日本が誇るクリエイターたちの命を奪った青葉真司。

 彼は全身の90%もの火傷を負いながらも、近畿大学医学部附属病院熱傷センターが誇る最先端の医療技術によって生き長らえた。

 34人の死亡後、2名が別の病院で入院中に亡くなられたことを考えると青葉の命拾いは納得いかないが、青葉は病院で「こんなに優しくされたのは初めて」などと泣いたという。別に青葉の命が大事なのではなく、青葉を被疑者死亡で幕引きさせないため、そして責任を取らせるためであり、私からすればこれだけのジェノサイドを実行しておいて、どこまでも自己本位かつおめでたい性格としか思えない。

 青葉は犯行時41歳。1978年生まれの氷河期世代にあたる。私は1972年生まれ、私も仕事で何度かお会いした京アニの犠牲者の一人、武本康弘監督も1972年生まれの同学年だ。

 拙著『しくじり世代』は奇しくも本事件と同年同月に刊行された。1971年から1981年生まれの団塊ジュニア、ポスト団塊ジュニアを取り上げたノンフィクションで、同世代の青葉と重ねて紹介されたこともある。今年1月の野田小4虐待死事件の父親が41歳、6月に家庭内暴力と引きこもりのあげく農水事務次官の父親に殺された息子が44歳、9月の東名あおり事件のエアガン男が40歳と、注目の事件に同年代が続出したことも手伝ったのかもしれない。前年には41歳のブロガーが43歳の無職にネット上の揉め事で刺殺されている。

 私にとっての団塊ジュニア・氷河期世代のキーワードは「競争」である。

関連記事

トピックス

米倉涼子の“バタバタ”が年を越しそうだ
《米倉涼子の自宅マンションにメディア集結の“真相”》恋人ダンサーの教室には「取材お断り」の張り紙が…捜査関係者は「年が明けてもバタバタ」との見立て
NEWSポストセブン
地雷系メイクの小原容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「家もなく待機所で寝泊まり」「かけ持ちで朝から晩まで…」赤ちゃんの遺体を冷蔵庫に遺棄、“地雷系メイクの嬢”だった小原麗容疑者の素顔
NEWSポストセブン
渡邊渚さん
(撮影/松田忠雄)
「スカートが短いから痴漢してOKなんておかしい」 渡邊渚さんが「加害者が守られがちな痴漢事件」について思うこと
NEWSポストセブン
平沼翔太外野手、森咲智美(時事通信フォト/Instagramより)
《プロ野球選手の夫が突然在阪球団に移籍》沈黙する妻で元グラドル・森咲智美の意外な反応「そんなに急に…」
NEWSポストセブン
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
11月27日、映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を鑑賞した愛子さま(時事通信フォト)
愛子さま「公務で使った年季が入ったバッグ」は雅子さまの“おさがり”か これまでも母娘でアクセサリーや小物を共有
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)は被害者夫の高羽悟さんに思いを寄せていたとみられる(左:共同通信)
【名古屋主婦殺害】被害者の夫は「安福容疑者の親友」に想いを寄せていた…親友が語った胸中「どうしてこんなことになったのって」
NEWSポストセブン
高市早苗・首相はどんな“野望”を抱き、何をやろうとしているのか(時事通信フォト)
《高市首相は2026年に何をやるつもりなのか?》「スパイ防止法」「国旗毀損罪」「日本版CIA創設法案」…予想されるタカ派法案の提出、狙うは保守勢力による政権基盤強化か
週刊ポスト
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《累計閲覧数は12億回超え》国民の注目の的となっている宮内庁インスタグラム 「いいね」ランキング上位には天皇ご一家の「タケノコ掘り」「海水浴」 
女性セブン
米女優のミラーナ・ヴァイントルーブ(38)
《倫理性を問う声》「額が高いほど色気が増します」LA大規模山火事への50万ドル寄付を集めた米・女優(38)、“セクシー写真”と引き換えに…手法に賛否集まる
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン
中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
《再スタート準備》中居正広氏が進める「違約金返済」、今も売却せず所有し続ける「亡き父にプレゼントしたマンション」…長兄は直撃に言葉少な
NEWSポストセブン