3本目の動画では清原の西武時代が語られていた。こうして全ての動画を視聴したのだが、やっぱり清原の雑談力は高い。何があっても希有なスターであることを再確認した。そして3本ともに、高校の後輩でもある片岡が良くも悪くも規格外な清原を受け止め続ける。時折、清原が「コレ話してもいいんかなぁ……」と悩んでも片岡は「もう時効、時効ですよ!」と話を引き出す。ゆえに、清原から漏れるエピソードが過激となる。おかげで、まるで劇画の中の出来事のような話を聞くことができた。
清原に限らず、こんなに面白いエピソードトークが湯水のように湧き出る人たちを、しゃべりのプロが放っておくはずがない。ナイツが司会を務める『プロ野球 そこそこ昔ばなし』(Amazonプライム・ビデオ)は、元プロ野球選手による、100%バラエティに振り切った内容となっている。なかでも、準レギュラー金村義明による近鉄の貧乏球団エピソードは鉄板ネタ。繰り返し聞いても笑える話に仕上がっている。
このように現在、元プロ野球選手によるエピソードトークブームが訪れている。そして、特徴的なのは試合そのものより周辺事情が数多く語られている点だ。
野球はワンプレーごとに止まるため、そこで何かが起こる。常に動いているスポーツにはない野球の特質がエピソードトークを生みやすい環境であることも理由だろう。また、アメリカから輸入されたスポーツ・ベースボールが日本にフィットしたことも関係していると思う。日本人が野球を愛した結果、武道、柔道、相撲道、華道のように「野球道」といった言葉まで誕生した。“道”とは「分野を通じて、人としての成長を目指す」意味が込められている。技術とともに人間性を問われる野球には、理不尽さが付きまとう。
結局、一場問題、清原と片岡のPL学園話、金村の近鉄漫談にしても全てが理不尽さから派生したものである。そして時を経て、当人たちは当時の理不尽さを笑い飛ばしている。体育会系のカラッとした空気感が心地よい。絶対に体験したくないが、濃厚な日々がちょっと羨ましい体育会系の自虐ネタは面白い。そんなエピソードを知名度が高い元プロ野球選手が話せば、コンテンツとして流行ること必須。今のブームは当然ともいえる結果だと思う。