テレビや新聞、雑誌に山田さんが出ても発案者の名は出ていません。面白いアイディアは独り占めにするっていうのが彼の性格なのかな、恥ずかしくないのかしらと困惑しました。加えてアーティスト同士という感情以上に、山田さんに年上の友人として敬意を抱いていましたしね。僕は友情を踏みにじられたとも感じています。そういう態度やモノの考え方は彼個人のものなのか、それとも日本映画界の悪習でしょうか?
もし、今回の件が日本映画界の慣習なら、まともに物を創る人間の住む世界とは思えない。本当に、そうじゃないことを祈りますね。
◆「山田さんは芸術家ではない」
〈今回のインタビューの前に、横尾氏は山田監督宛に抗議の手紙を送った。本件の経緯、踏みにじられた友情や仁義について切々と綴ったという〉
はじめは内容証明を松竹へ送ろうかと思ってたんです。だけど、それだとクレジット欲しさのセコい感じがしてやめました。僕の気持ちを真摯に山田さん本人に伝えたいから、手紙にしたんですよ。一言、「あなたのアイディアを使うけれども、製作は任せてくれ」と断わってほしかったということ、そしてそれをしなかった彼の態度について、「晩節を汚している」とも書きました。
すると山田さんは、その手紙を持って声を震わせて僕のアトリエへ駆け込んで来た。彼は「誤解だ、当初から横尾さんの発案だと喋っていました」と言うわけ。僕がそんな話どこからも入ってこないと返すと、今度は「名前を出すと忙しい横尾さんに迷惑がかかるから」と答える。説明が二転三転した末に、なんとか懐柔しようと「これからの取材ではちゃんと横尾さんのことを言います。今度こそ一緒に映画を作りましょう」と僕の肩を抱いてくる始末(笑い)。全然、真意が伝わってないんだなと呆れました。