●八木秀次氏(麗澤大学教授・反対派)
いま「女性天皇を認めるべきではないか」という世間の声が大きくなっていることは知っています。
ただしテレビに映る街頭インタビューや、インターネットでの書き込みなどを見ると、そういう意見の支持者たちは「愛子さまが天皇になれないのはかわいそう」といった感情論ばかり語っています。
“識者”と呼ばれる女性天皇容認論者にしたところで、その主張はほとんどこうした感情論の延長線上にあるものでしょう。
中には「愛子さまは天皇陛下のお子様として、そのお考えや思いを受け継いでいる」などといった、もっともらしい意見もありますが、天皇とは血統と伝統に基づく皇位継承のルールに従って即位する存在。「有能だから」選ばれるものではないのです。
江戸時代以前の日本に、複数の女性天皇がおられたことは事実です。ただそれらの女性天皇は全員、独身か寡婦の女性でした。即位後に結婚した方はおらず、子供もいません。
しかし現代で女性天皇の即位を認めたとして、その方に「一生結婚しないでください」と強制することが、果たして可能なのでしょうか。
そうすると女性天皇の配偶者や、その子供をどう位置付けるかという問題が出てきます。歴史上、皇族外の出身である男性が皇族になった例はありません。いま女性天皇を認めると、そういう複雑な問題が発生してしまうのです。
仮に民間出身の女性天皇の夫が野心を抱き、自分の子供を天皇にしようとしたら、国民は果たして素直にその「天皇」に敬意を抱くでしょうか。感情論ではなく、旧皇族の皇室復帰など、先例に基づいたやり方で考えるべきだと思います。
【※本誌読者アンケート「2020年日本の重要問題について意見をお伺いします」から集計。998人が回答。100%に満たない部分は無回答】
※週刊ポスト2020年1月17・24日号