豪放磊落なイメージの半面、繊細さも併せ持っていました。どんなゲームでも登板前はものすごく緊張する人だった。ジャイアンツからの期待や、本人のプライドがプレッシャーだったのでしょう。一緒に練習する面倒見の良さは、寂しがり屋の裏返しだったのかな。
400勝というのは無闇に投げ続けたからといって残せる数字ではありません。人一倍強い緊張感と勝負に対する執念を持ち、常に万全の態勢でマウンドに上がっていたからこそ成し遂げられた。
もちろん時代と共に変わっていくこともあります。カネさんは現役時代には先発完投、名球会でも200勝という数字にこだわったが、今は7回、8回、9回のリリーフ専門など分業制が進んでいる。カネさんはいつも“完投してこそエース”と言っていたけど、内心では先発完投の減少を“仕方ない”と思ってたんじゃないかな。
※週刊ポスト2020年2月28日・3月6日号