「とんかつ店や料金所の対応が世間では評価されていますが、同じように“営業停止”しなければならない風潮が生まれています。本音を言えば、地元有名店や公的な機関だからできたことともいえます。中小企業や小規模の飲食店などで感染者が1人でも発覚したら消毒や清掃などで業務が滞り、長期間の休業、最悪の場合は倒産するかもしれません。飲食店やデパート、旅館やホテルでも営業停止が怖いと戦々恐々としています。
自主的な公表が善意として肯定的に報じられるなか、“怖くて従業員を検査させられない”と悲鳴をあげる経営者は少なくない。なかには感染が疑われる従業員に検査を受けさせず、自宅に“隔離”させる場合もあると聞きます」(経済ジャーナリスト)
◆なぜ中国人観光客がごった返す施設から感染者出ないのか
もちろん自主的な隔離では完全な拡大防止は望めない。
「同居人や買い物時の接触者などを介して、感染が拡大する恐れがあります。ただし、本人に検査を受けてもらわなければ行政は何も対応できません。検査を受けない“隠れ感染者”の増加は極めて由々しき事態です」(厚労省関係者)
ウイルス検査を受けて感染がわかった後も、素性を隠そうとする人もいる。
「感染した札幌在住の70代男性は、発症状況や不特定多数との接触について本人が非公開を希望しています。
また個人事業主やアルバイトなどは国民健康保険の保険証を使って検査することが多いため、企業の保険証を使うサラリーマンとは違って、本人が申告しなければ、職業や勤め先を完全には把握できません。この先は関連企業などへの迷惑を恐れて、職業を偽る人が出てくる可能性があります」(前出・厚労省関係者)
前述のとおり、北海道の兄弟は、中国人客が少なからずいるスキー場で感染したと推測されている。
それならば、中国人観光客でごったがえす都内の有名デパートや銀座のブティック、都内の外資系シティーホテルや京都などの観光地の旅館やホテルの関係者から、「感染者が1人も出ていない」のはどういうことなのか。推して知るべし、ということだろう。
感染者の情報は公表すべきか、秘匿すべきか。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんは「もはや公表に意味はない」と指摘する。
「すでにウイルスは蔓延状態で、店や企業が感染を公表して営業を自粛しても、逆に秘匿して営業を続けても、感染拡大を防ぐ効果は少ない。それよりも、満員電車での通勤通学をやめる方がよほど効果的です。
自主的な営業停止をやめろとは言いませんが、“新型コロナは怖い”というイメージが先行して、公表と営業停止が当たり前になるほど、隠れ感染者を生みかねません。過度に怖がらず、粛々と対処することが必要だと思います」