「途中親しくしてた足袋屋がいなくなっちゃって心配だったろ?」(ピエール瀧の途中降板を遠まわりに言う私は大人である)。
勘九郎は実直に「ああいう問題は勿論いけない事ですが、僕はなんか近くて親しい人がいなくなっちゃって、TV見てても、ちゃんとあの人ゴハン食べてるかなとか気になっちゃって」。根っから優しい男なのだ。私が「あの足袋屋がのちに厚底の凄いシューズ作って、それ履いて勘九郎が札幌を走りゃいいんだよ」と言ったら嬉しそうにアハハと少年時代の顔で笑った。
プレッシャーも様々あって大変だったと思う。「時間があいたら何してるの?」「ライブですネ。息子二人も連れていって乃木坂、欅坂、日向坂の三坂をめぐってます」。歌舞伎役者として、あのパフォーマンスも刺激されるらしい。ファンが掛け声を舞台にかけるのが歌舞伎と同じだと、目をキラキラ。
私思うにその大昔“女流義太夫”に追っかけが付いていい所で掛け声「どうする! どうする!」。あれと同じだろうと思う。
三月の明治座が楽しみ。昼は「一本刀土俵入」、夜が弟・七之助と(ますます美しさに磨きがかかっている)鶴屋南北ならではの人気演目「桜姫東文章(あずまぶんしょう)」。手とり足とり監修指導はあの坂東玉三郎。勘九郎と七之助兄弟での濡れ場ときちゃ、もうたまらない。父上にみせたいネ。
■イラスト/佐野文二郎
※週刊ポスト2020年3月13日号