学校が休みになり、寮生も家庭に戻ることになります。もちろんこれはウイルスの拡大を恐れての処置です。最善の注意を払わなければなりません。
そして同時に私が強く諸君らに望むことは、弟や妹に今まで以上にやさしく接してほしいということです。親の仕事の支えになり、高齢者への心に寄り添ってほしいということです。君たちの若さはそれに耐えうるはずです。貢献できる力を持っているはずです。中学生であれ、高校生であれ、大学生であれ、家庭にあって大きな支えになってほしいのです。正義と柔軟な感性を持つ若さこそ社会と家庭を思いやりとやさしさに包まれた場所に引っ張って行けるのです。積極的に頼られる存在になってください。
それは、この社会から差別や偏見を一掃する第一歩です。コロナへの対策は、病気の蔓延を防ぐのみではありません。差別なき社会のありようを決める試金石でもあるのです。人間の持つ真の絆が生まれるのは、危機です。
やさしさを胸いっぱいに吸い込んで明日に向かいましょう。遅くとも春は必ず来ます。学園で再会しましょう。
2020年2月29日 渡辺憲司(自由学園最高学部長)
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どのような目的意識を持って、家庭での時間を過ごすか──。その姿勢しだいで、子供たちの成長ぶりは大きく変わってくる。渡辺氏のもとにはすでに様々な教育関係者から反響が寄せられているという。