彼女は、お客さんは好きだが“人間”はあまり好きでないと語る。自分自身に嫌悪感があって生きづらさを感じたり、有名書店員としての周囲の評価と自己認識のギャップに悩むこともあったそうだ。それも「ストリップと出合って楽になった」と微笑む。
「まるで想定していなかった『踊り子になる』という“流れ”に乗ったら、ずいぶん楽になりました。いまはとてもいい状態で、変に考えすぎずに楽しく踊れています」
踊り子には、専業で40日間舞台に立ちっぱなしの先輩もいれば、夏休みなど長期休みだけ出演する大学生もいる。年齢層も幅広く、新井さんの母親世代もいるという。
お客さんは温かく、演技中に自主的にタンバリンを叩いて舞台を盛り上げたり、「ステージにパンツ忘れてるよ」と教えてくれたりする。小さな劇場で見聞きするあらゆる出来事を、新井さんは愛しそうに語る。
「いまはとにかくすべてをポジティブに捉えられています。客入りがよくない日でもピリピリせず、お客さんが率先してステージを盛り上げてくれるし、踊り子さんもみんな明るくて、新人の私によくしてくれます」
いま新井さんは、1か月のうち10日間は1つの劇場の舞台に専念し、残りの20日間は日比谷の書店で働く。今後も書店員、文筆家、ストリッパーという異色の三足のわらじを履き続けていくという。
「本屋さんで本を売ってレジを打つのも楽しいし、書いた文章が誰かに届くのも楽しいし、舞台で踊ってみんなに喜んでもらうことも楽しい。
ただ“楽しい”だけでもありません。根底には経済的な『利益重視』の意識もあります。本がいっぱい売れて作家さんにお金が入ったり、依頼してくれた出版社にお金が入ったり、多くの人が劇場に足を運んでストリップ業界が豊かになる、そんな未来が見たいから、私は3つとも本業だと思って必死でやっています」
そう語った彼女は、とても清々しい笑顔をしていた。
※女性セブン2020年4月23日号