菅氏と野田氏に共通するのは、財務大臣を務めて増税派に転向し、総理の座を射止めたことである。
◆「総理が無能だと官僚がのさばる」
今井氏には先達がいる。24年前、通産官僚から橋本龍太郎首相の総理首席秘書官となり、橋本行革に辣腕を振った江田憲司氏(元民進党代表代行)だ。
橋本首相が行革の目玉に掲げたのは、明治以来の中央省庁の大再編であり、1府22省庁あった中央官庁を1府12省庁に半減させるものだ。当然、霞が関や族議員あげた猛反対を呼び、金融行政と財政を分離して財務省に“格下げ”となる大蔵省は徹底抗戦した。
その中央省庁再編を取り仕切った江田氏は、「橋本の森蘭丸」と呼ばれて批判の矢面に立たされた。
森蘭丸とは、織田信長のお気に入りの小姓で秘書役を務め、織田家の有力部将たちから「蘭丸に睨まれると信長様の覚えが悪くなる」と恐れられたと伝えられている。
まさにかつての江田氏は現在の今井氏とそっくりな立場にいた。総理秘書官に振り回される現在の政治状況をどうみているのか―─江田氏本人はこう語った。
「私自身も橋本総理秘書官のときは今の今井さんのように官邸を牛耳っていると随分と批判をされたが、私も彼も、あくまで総理の命を受けて総理を補佐している。今回の新型コロナ対策でも安倍総理に意見具申しているのでしょうが、だからといって今井さんが勝手に政策を差配しているわけではなく、あくまで最終判断は安倍総理が行なっている。その政策がまちがっているとすれば、安倍総理を批判すべきでしょう」
そのうえでこう警鐘を鳴らす。
「確かに、官僚に操られている政治家は多い。それが一国のトップ、総理だったら大変です。だから政治家がもっと賢くならねばならない。政治家、総理が無能だと、権力官僚がのさばることになる」
かつて日本は「政治は三流、官僚一流」といわれて優秀な官僚が国を支えた。それがいまや総理の側に仕える官僚が国難にあたって「マスク2枚」の知恵しか出せない。いつの間にか「政治も官僚も三流」に成り下がったのか。
※週刊ポスト2020年4月24日号