◆百貨店再編をシミュレーションする
このままコロナショックが長引けば、2020年の歳末商戦を前に、財務基盤の弱い有名百貨店の再編話が表面化するかもしれない。あくまで前向きな再編の組み合わせをシミュレーションしてみたい。
まず、これまでも幾度となく統合話が取り沙汰されて可能性が高いのが、松屋と東武百貨店の統合だ。東武百貨店の親会社、東武鉄道グループは松屋の事実上の筆頭株主だ。東武鉄道が4.53%、東武鉄道グループのファイナンス会社、東武シェアードサービスが4.40%、合わせて8.93%を保有している。
小田急百貨店と京王百貨店の統合もあり得ない話ではない。両社の親会社の私鉄は同根で、戦前の大東急、東京急行電鉄が戦後分割され、東京急行電鉄(現・東急)、京浜急行電鉄、京王帝都電鉄(現・京王電鉄)と、新会社の小田急電鉄に分離された。東急百貨店、小田急百貨店、京王百貨店の親会社のルーツが同じなのである。もし、東京・新宿に隣り合わせるように本店のある小田急と京王の百貨店統合が現実味を増した場合、東急百貨店はどう動くのだろうか。
高島屋の動きにも関心が集まる。高島屋はエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)と経営統合を模索したが、2010年に破談になった。当時、三越伊勢丹の大阪進出を阻止するために手を組んだといわれたが、破談後、高島屋は独立独歩の経営を続けている。
破談したとはいっても、高島屋とH2Oは相互に5%の株式を持ち合っている。その高島屋は、「かつて敵対していた三越伊勢丹と合流する」(外資系証券会社の百貨店担当のアナリスト)という観測も浮上している。
他方、「セブン&アイ・ホールディングス傘下のそごう・西武との統合話もある」(国内証券会社の同アナリスト)。セブン&アイは、百貨店買収を主導したカリスマ経営者、鈴木敏文氏が去り、「鈴木敏文の負の遺産」(セブン&アイ関係者)といわれている百貨店を切り離すのではないかという観測が流れる。そこで、高島屋とそごう・西武との経営統合が囁かれるようになった。
高島屋が首都圏の三越伊勢丹、そごう・西武のどちらかと手を結べば、高島屋の株式を持ち合っているH2Oは近鉄百貨店と統合し、阪急阪神・近鉄の関西連合を形成するかもしれない。近鉄百貨店の親会社は近鉄グループホールディングスである。
コロナ休業で存亡の危機を迎えている百貨店業界。三越伊勢丹は売り上げの大幅減が長期化した場合に備え、三菱UFJ銀行と三井住友銀行に対し、総額800億円の融資枠を要請した──との報道が出ている。
コロナ騒動がいつ収まり、いつ消費が回復するかのメドはまったく立っていないが、いずれにせよコロナ後の「百貨店地図」は大きく塗り替わっていくだろう。