関係者の多くが口を揃えるのが「コンプライアンス問題」だ。昨今の地上波テレビはスポンサーはもちろんのこと、あらゆる視聴者や物事への配慮が先行して、「表現の幅」が狭くなった。元日本テレビエグゼクティブプロデューサーの吉川圭三さんはこう言う。
「たとえば昔の『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ系)はほとんど妄想に近い内容で、『佃島に半魚人が出た!』といってみんなでバカ騒ぎして楽しんでいましたが、いまならヤラセと捉えられかねない。(同番組で行った)“早朝バズーカ”(寝ている芸能人の部屋に入っていきなりバズーカで大音量をあげる)も同じですが、いまなら不謹慎だとひどく怒られるように思えます」
30年以上、「出る側」として地上波テレビにかかわってきたモト冬樹が演者の本音を明かす。
「本当は『批判が半分、絶賛が半分』がいちばん面白いのに、いまは何かやるとすぐ文句が来るし、みんなスポンサーの顔をうかがっている。おれがやっていた『THE夜もヒッパレ』(日本テレビ系)のように、良質な番組は何度もリハーサルを重ねるなど、作り込む必要があってお金はもちろん、手間暇がかかる。そういう番組もいま、減っているよね。だから自由で面白いネットドラマやYouTubeに視聴者が流れるのは当然だよね」
それでは、実際に制限のないNetflixの作品を手がけた人たちはどう感じたのか。又吉直樹の芥川賞受賞作『火花』の脚本を担当した高橋美幸さんが語る。
「確かにネットドラマは自由度が高く感じました。地上波テレビは視聴率を気にするのでCMの前はチャンネルを変えられないように起伏を作るなど、各話盛り上げなければならないポイントがあります。
しかし『火花』はゆったりとした作り方で、枠も気にせず作るため1話ずつの長さが違うことが特徴でした。日本の視聴者は最後に必ず印籠が出る『水戸黄門』のような、いい意味での予定調和を好むので番組が似通う一方、Netflixの作品にはエッジの効いた面白さがあります」