「ネットは自分で見たい番組を選びますが、テレビはスイッチを入れさえすれば何かしらの番組が放送されている。まったく興味のないものがふと目に入り、何となく見ていたら急に引き込まれてしまうこともある。
ぼく自身、偶然見た中国のドキュメンタリーがきっかけで大学時代は中国語のサークルに入っていたし、テレビ東京に入ってまったく興味のない演歌の担当になりましたが、番組を作るうちに好きになった。テレビは『未知との遭遇』にあふれているので、その出会いを楽しんでほしい」(高橋さん)
加えて、スイッチを入れて音声を流しているだけで世の中の動きを知ることができるのもテレビの特性だ。新型コロナウイルスや地震など有事の際はL字型画面で24時間必要なニュースが流れてくる。
視聴者に寄り添うための新しいシステム作りも進む。その1つが3月30日から先行4地区に加えて、ほかの地区すべての視聴率調査に導入された「個人視聴率」だ。調査にあたるビデオリサーチが解説する。
「従来までの『世帯視聴率』とは、テレビを所有する世帯のうち、どのくらいの世帯が番組を見ているのかを表す指標であるのに対し、『個人視聴率』とは、どのくらいの“人”が番組を見ているのかを表す指標で、性別・年代別など個人単位での視聴を捉えます」
これによってテレビ業界に変化が生じた。
「視聴者の詳細なデータが得られることで、“誰に何を訴えたいか”を明確にしたコンセプト作りやキャスティングが可能になった。今後は作り手の手腕がより試されると思います」(民放のドラマプロデューサー)
放送終了後にネットで一定期間行う「見逃し配信」も普及しつつある。
「特に深夜番組の見逃し配信は、ネットに親しむ人をテレビに呼び込むきっかけになります。正直、これまでテレビはネットに対して消極的でしたが、これからはもっとネットを利用すべき。ぼくらテレビマンは、とにかく番組を見てほしいんです」(前出・民放のドラマプロデューサー)
システムの導入とともに、作り手の意識も変わりつつある。