最終回まで盛り上がったドラマ『テセウスの船』(公式HPより)
「テレビ復権のヒントになるのは志村けんさんではないか」と指摘するのは前出の民放のドラマプロデューサーだ。
「ドリフはスポンサーにもテレビ局にも芸能事務所にも気を使わずに自分たちが面白いと思うことを視聴者に伝えたい、その一心でやっていた。特に『8時だョ!全員集合』(TBS系)のコントは当時のPTAから抗議を受けて、学校では名指しで『あの番組は見てはいけない』と言われていたこともあった。だけどそういった批判にめげずに、“面白いことをやるから見てほしい”というメッセージを発信し続けた。それさえあれば視聴者は見てくれるはずです」
元日本テレビエグゼクティブプロデューサーの吉川圭三さんは「ピンチをチャンスに変えてほしい」と語る。
「いま、コロナの影響で多くの人が自宅にいて、再びテレビを見るような環境が生まれている。必要なのは人の真似をせず、コンプライアンスをくぐり抜けること。それができれば、テレビを面白くするのはそう難しいことではないと思います」
実際、『テセウスの船』や『恋はつづくよどこまでも』(ともにTBS系)などのドラマは自粛ムードが広がるに比例して、視聴率を上げている。
『時効警察』(2006年、テレビ朝日系)、『みんな!エスパーだよ!』(2013年、テレビ東京系)などのテレビドラマも手がけた映画監督の園子温さんは「地上波のテレビドラマは規制の中でどう闘うかが面白かった」と振り返る。園さんはこう言う。
「映画監督は自分の作風をゴリ押ししがちだけど、ぼくはテレビという土俵でいかに視聴率が取れるかに挑戦しました。すぐに気が散ってテレビから離れてしまう視聴者をどう取り込むかという作業が面白かった。テレビでできるギリギリのエロに挑戦した『エスパー』は1話を編集するごとに偉い人に呼び出されて、小学生が廊下に立たされるみたいに怒られていました(笑い)。
怒られてカットして編集し直しての繰り返しだったけれど、年度末に『ギャラクシー賞』を取ったら相手の態度がコロッと変わってほめられた(苦笑)。だけどそうやって、怒られながらも面白いと思うことを追求し続けたことこそ価値があるんじゃないかと思うんです」
作り手の「面白いを伝えたい」。その気持ちがなくならない限り、私たちはテレビの前に集合するだろう。
※女性セブン2020年4月30日号
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