芸能

朝ドラ『エール』の薬師丸ひろ子は「まるでミューズ」の存在感

番組公式HPより

 こういう時節柄、物語が果たす役割は小さくない。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が朝ドラを分析した。

 * * *
 NHK連続テレビ小説『エール』もスタートから1ヶ月近くが経過し、物語の骨子が見えてきました。今回のモデルは作曲家・古関裕而と妻・金子。昭和という激動の時代の中で、全国高等学校野球選手権大会の大会歌「栄冠は君に輝く」、阪神タイガース応援歌「六甲おろし」など、広く大衆の心に響く曲を生み出した作曲家と妻の人生が描かれていく。ちなみに男性が主演する朝ドラは6年前の『マッサン』以来です。

 作曲家の主人公・古山裕一には窪田正孝、ヒロインで歌手になる夢を追い続ける関内音には二階堂ふみが抜擢されました。いずもインパクトのある人気役者だけに、いったいどんな夫婦像が出現するのか注目です。とはいえ、まだ二人は恋愛関係にまで到達せず、文通しつつ互いの距離を詰めている最中です。

 これまでの放送で際立って見えてきたのは、「古山家」と「関内家」という二つの家の「対照」でしょう。

 裕一の家・古山家は、福島の由緒ある老舗呉服屋。しかし経営危機に瀕し、父・三郎(唐沢寿明)はやむなく裕一を銀行経営の伯父・茂兵衛(風間杜夫)の養子に出す。茂兵衛は裕一を跡継ぎにするつもりで、裕一の音楽への興味や挑戦する気持ちを全く理解していない。

 一方、音の暮らす関内家は馬具製造を手がけてきたが父が急逝し、母と三人姉妹で家業を盛り立てることに。女ばかり四人、明るく自由な雰囲気。特に愛情深くてのびやかな母・光子(薬師丸ひろ子)が、関内家全体を包み込んでいるようです。

 まるでミューズのような薬師丸さんの存在感がすごい。父を失い不安に包まれている娘たちに向かって「お父さんはいる。目には見えないけれど、ずっとあなたたちのそばにいる」と力強く断言。あるいは、「歌手になりたい」と夢を語る音に向かって「夢をかなえる人は一握り」と厳しい現実を突きつけて、「あとの人たちは人生に折り合いつけて生きていくの」と冷酷なリアルを語る。そして「私の分も頑張ってね」と娘の背中を押す。「女の子だから~してはいけない」「どうせ女だから~仕方ない」と辛気臭いブレーキなんて一切踏まない。

「今は不幸みたいに思えるかもしれんけど、私はあんたたちのおかげで幸せ」とさらりと言う。平凡な母という「今」を肯定できる明るさに、視聴者は救われています。

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト