選挙に負けた側から「不正選挙だ」という声があがるのはよくあることだが、独裁国家ならまだしも、民主主義の韓国では考えにくい。投票結果を操作するなら、一律12%アップさせるというバレやすいやり方はしないだろう。文在寅を支持する左派の運動団体が、新型コロナによる当日選挙の中止を想定して、期日前投票に動員したといったところではないか。
いずれにせよ、新型コロナが選挙に大きな影響を及ぼしたのは事実で、この非常時に実施された選挙によって、文在寅政権は盤石の体制を築いたと言える。崔氏はこう続ける。
「裁判官はすでに文在寅派で占められ、国会も過半数を握り、いくらでも法案を通せるようになった。行政、司法、立法の三権を文在寅が掌握したのです。唯一、反抗していたのが、曹国(チョ・グク)前法相を追及していた尹錫悦(ユン・ソクヨル)検事総長でしたが、昨年末に検察の上位に位置する捜査機関『高位公職者犯罪捜査処』の設置法案が通り、主要な側近が左遷されて力を奪われている。
今回の選挙では、曹氏の長男の大学不正入学に関与した容疑で起訴されていた元・民情首席秘書官の崔康旭(チェ・ガンウク)氏が立候補しましたが、彼は『尹検事総長は高位公職者犯罪捜査処に捜査されるだろう』と発言し、与党が圧勝して自らも当選した後には『世の中が変わったことを実感させてやる』とまで豪語した。政治家が検察への介入を公言するという常軌を逸した事態です」
自らを抜擢した文大統領におもねることもなく、対決姿勢を示してきた尹検事総長。文在寅政権側の“倍返し”で彼に捜査の手が及べば、検察側に反攻の芽はなくなるのは必至だ。
●取材・文/清水典之(フリーライター)