◆「正義」の仮面に気づかせる
心配なのは、これからさらに自粛が長引くとますます独善的な「正義」が暴走し、さまざまなトラブルが発生しないかということだ。また相互監視や密告によって、人びとが相互不信に陥る戦時中のような社会にならないかと危惧される。しかもそれは緊急時における一過性の現象にとどまらず、コロナ禍が過ぎ去ったあとの職場や社会にも後遺症として残るだろう。
では、私たちが「正義中毒」にかからないようにするにはどうすればよいのか。
まず自分の確信している「正義」が、実は絶対的なものではないと自覚することである。たとえばパチンコ店に通う客を非難する一方で、自分も感染リスクのある満員電車で通勤しているかもしれない。また他人の問題発言をネット上で罵倒する行為が、個人の人権侵害という、問題発言よりはるかに重大な「不正義」に当たる場合もある。
自分の行為が本当の正義ではないと気づけば、行動は自ずと変わるはずだ。
思い出してもらいたいことがある。かつて学校や幼稚園で教職員に無理な要求を突きつける保護者の存在が社会問題となり、「モンスターペアレンツ」と呼ばれるようになった。すると不思議なもので、無理な要求をする保護者が一気に減ったそうである。それまで自分の主張が正しいと信じ込んでいた人が、「モンスター」と呼ばれることで世間から冷たい目で見られていると気づき、行動変容につながったのである。
「世間」に影響された行為は、「世間」によって正すことができるのだ。