国内

「自粛警察」が暴走 正義中毒に陥らないためにすべきこと

店名公表後も営業を続けていた大阪のパチンコ店(時事通信フォト)

店名公表後も営業を続けていた大阪のパチンコ店(時事通信フォト)

 コロナ自粛の長期化により、営業する店舗に匿名で貼り紙をしたり、外出する人たちに過剰に自粛を求めたりする市民の行為がエスカレートしている。過去の震災時にも起きたこうした“不謹慎厨”がこれ以上広がらないためにはどうすればいいのか──。同志社大学政策学部教授の太田肇氏が持論を展開する。

 * * *
 新型コロナウイルスの蔓延により長引く自粛生活で、国民のイライラが募ってきた。それをぶつける先が、世間で「悪者」扱いされている人たちだ。

 営業自粛に応じないパチンコ店の前で開店待ちをしている客に罵声を浴びせたり、詰め寄って写真を撮ったりする。ライブハウスや飲食店に脅迫めいた貼り紙をし、コロナ感染者が出た会社に嫌がらせの電話をかける。他府県ナンバーの車にあおり運転や投石をする。

 それが相手の人権や営業権を侵害し、暴行罪や脅迫罪、名誉棄損などにつながる行為だという自覚はない。公園に子どもを連れて行っただけで警察に通報する人や、マスクをかけずに歩いていると絡んでくる人もいるそうだ。

 力づくで自粛させ、要請に従わない者を取り締まろうとする「自粛警察」は、新型コロナウイルスがもたらしたもう一つの恐怖だといえるかもしれない。

 ネットの世界にも他人を攻撃する投稿が蔓延している。SNSでは有名人の不適切な言動を匿名の第三者が増幅して伝え、バッシングする。それを見た多くの人たちがリツイートや「いいね」を押して拡散し、ネットを炎上させる。こうした現象は政府や自治体の自粛要請が始まってから明らかに増えている。

 東日本大震災や熊本大地震、西日本豪雨の後でも、結婚パーティーを開く人、笑顔でスイーツを食べる写真をインスタグラムにアップする芸能人、新しいファッションをPRした企業などが「不謹慎狩り」のターゲットになった。

 正義の名のもとに相手の落ち度や非協力な態度をとらえて一方的に叩くのは、学校や職場で起きるイジメの典型的なパターンである。

 学校では校則を破る子や共同作業をサボる子が、職場では残業せずにサッサと帰る社員や、空気を読まない社員が周りから仲間外れにされたり、嫌がらせを受けたりする。それと同じことが、いっそう危険な形でいま各地に広がっているのである。

関連記事

トピックス

大谷翔平がこだわる回転効率とは何か(時事通信フォト)
《メジャー自己最速164キロ記録》大谷翔平が重視する“回転効率”とは何か? 今永昇太や佐々木朗希とも違う“打ちにくい球”の正体 肩やヒジへの負担を懸念する声も
週刊ポスト
竹内朋香さん(27)と伊藤凛さん(26)は、ものの数分間のうちに刺殺されたとされている(飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
「ギャー!!と悲鳴が…」「血のついた黒い服の切れ端がたくさん…」常連客の山下市郎容疑者が“ククリナイフ”で深夜のバーを襲撃《浜松市ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
和久井学被告と、当時25歳だった元キャバクラ店経営者の女性・Aさん
【新宿タワマン殺人・初公判】「オフ会でBBQ、2人でお台場デートにも…」和久井学被告の弁護人が主張した25歳被害女性の「振る舞い」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
50歳で「アンパンマン」を描き始めたやなせたかし氏(時事通信フォト)
《巨大なアンパンマン経済圏》累計市場規模は約6.6兆円…! スパイダーマンやバットマンより稼ぎ出す背景に「ミュージアム」の存在
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン