この非常事態に安倍首相が任期途中で退陣することになれば、順当なら後任の最有力者は麻生副総理のはずだ。
麻生氏は首相に不測の事態が起きた場合に首相臨時代理を務める序列1位で、首相と同時にコロナに感染するリスクを防ぐために4月からは官邸でのコロナ対策本部の会議などへの出席を免除され、“万一の事態”に備えてきた。
しかし、麻生氏への後継はすんなりまとまりそうにない。政治評論家の有馬晴海氏の指摘だ。
「安倍首相が退陣した場合、自民党総裁選を実施し、当選者が国会で首相指名を受けることになる。しかし、有事に総裁選で政治空白をつくる余裕はない。そのため、副総理の麻生氏が安倍さんの残り総裁任期の来年9月まで暫定的に首相に就任し、総裁選を実施するのが自民党のセオリーです。
しかし、今回はそう簡単にはいかない。まず麻生氏はリーマンショック当時に総理を務めて経済回復に失敗した。あの時の定額給付金を『失敗だった』と自分で言っているし、今回の10万円支給も、『手を上げた方に1人10万円』と払い渋るような言い方をして国民の批判を浴びた。
しかも、森友問題をめぐる財務省の文書改竄事件では責任を取っていない。そんな麻生氏が後継首相としてコロナ対策の指揮を執ることは公明党も自民党からも反対が起きるし、なにより国民が納得しないでしょう」
次の総裁選に出馬を目指している石破茂氏や岸田文雄氏、河野太郎氏らは乱戦になることが予想され、話し合いで一本化できる可能性はない。無理に総裁選に突入すれば、自民党の親安倍勢力と反安倍勢力が二分する戦いになり、とても危機対応どころではなくなる。