仕事ができず収入が途絶えた影響は大きい(時事通信フォト)

仕事ができず収入が途絶えた影響は大きい(時事通信フォト)

 多くの人が、生活に行き詰まり、困窮するという事例が少なくない中、暗躍しているのがこうした非合法の金融業者だ。東京都内の暴力団関係者・M氏は、3月ごろから闇金に手を出す人々が増加傾向にあると話す。

「個人店経営者からつなぎ融資的な感じで、小口の依頼を受けることが増えています。額にして大体20~30万。今、業者が注目しているのは持続化給付金と、個人への一律定額給付金。これがあるから、業者は取りっぱぐれがなく、少なくとも2~3ヶ月後には莫大な利益が出ると考えているようです」(M氏)

 闇金というと、厳しい取り立てをして人身売買もさせるような映画やドラマのイメージがあるが、彼らも非合法とはいえ金貸しであるので、貸した金を返済させるのがビジネスだ。どれだけ窮した相手でも金を貸すと思われているかもしれないが、返済の見込みがまったくない相手には貸さない。ただ、その返済見込みがまっとうなものではなく、今回はどんな人でも給付金が手に入るから返せると踏んでいるのだ。

 近年、ネットを使った「ソフト闇金」や「ひととき融資」と言われる小口の非合法金融が問題視されてきた。取引額は一回につき数万円程度、ほとんど個人間の金の貸し借りに近い形で行われていた。だが、給付金の存在が事実上の担保となって、取引額は一気に増えたという。

「サラリーマンでも、4人家族だと40万円の給付が発生しますよね? そういう人には30万円程度までは貸し付けるそうです。借主の手元に行くのは25万円未満ですが……。2ヶ月で5万円の上がりが出るなら、業者としても申し分ないでしょうね」(M氏)

 国や自治体の対応が後手後手にまわり、こうした違法業者に頼らざるを得なくなっている人たちがいる。かつ、我々の税金の少なくない額が、本当に困窮した人たちを経由して、反社会勢力の手に易々と渡ってしまっている現実。他にも懸念はある。前出記者が続ける。

「違法闇金業者も、法改正や当局の締め付けが厳しくなったことから表立って活動ができなくなり、仕方なく小口融資で細々とやってきたのですが、ここにきてビッグチャンスが来たと活発になっています。貸し借り額も大きくなり、給付金が入金されたとしても返済に困る人たちが続出し、一家離散が起きたり自殺者が出るなど、多くの問題が起きる可能性が高い。そもそも、緊急事態下で、国民がこのように追い込まれないようなセーフティーネットが機能していないことが問題。結果、反社の跋扈まで許している」(大手紙社会部記者)

 筆者はこうした取材の中で、やはり闇金を、それがたとえソフトと名乗っていても利用するべきではないと、取材協力者に伝えてきた。今はよくても、後から困るかもしれない、相手は慈善事業者ではない、と。しかし、どんな言葉も響かない。「だったら金を貸してくれ」と言われると、返す言葉がないのだ。困窮し、追い込まれた人々が十分に救済されず、その隙をついた連中が焼け太り的に私腹を肥やす。これも「非常事態」下で起きている、致し方ないことなのか。国も司法も、連中のことを意図的に無視しているようにすら思えるのである。

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