吉村府知事を陰で支える橋下氏(時事通信フォト)
「しかし」とこう続ける。
「国難に直面した今、“ポスト安倍”がいないからと、幹部から消去法で選ぶという自民党の慣わしは通用しない。過去、国会議員が不甲斐ないときは、地方からムーブメントが起きた。『東京から日本を変える』といった石原慎太郎氏や大阪維新を旗揚げした橋下徹氏、減税日本の河村たかし氏など、地方の首長の動きが国政を動かした。国民の支持さえあれば、地方のリーダーから総理の道が拓けることもある」
憲政史上、知事から一足飛びで総理に上り詰めたのは細川護熙首相ただ1人だ。細川氏は熊本県知事から日本新党を結成してブームを起こし、自民党分裂の政界激動の中、国政進出わずか1年で総理に就任した。
折しも、長期政権を誇った安倍内閣はコロナ対応で支持率が低下し、自民党には人材が枯渇、国民は新しいリーダーを望んでいる。細川氏が登場した政治状況と似てきた。政治ジャーナリスト・角谷浩一氏は「吉村氏の資質は十分」とみる。
「首長として役所を率いた経験は重要です。安倍首相は総理就任前に官房長官は経験したが、大臣として役所を率いたことはなかった。その点、吉村氏はまだ若いが大阪市長、大阪府知事として大きな役所を動かしてきた。それは総理の仕事に直結する。永田町の政治的な修羅場をくぐった経験はなくても、永田町の論理に捉われない政治ができる可能性を持っている」
吉村氏が総理になるシナリオは、維新の“創立者”である橋下徹氏による下準備も済んでいる。地域政党「大阪維新の会」を結成し国政に進出させ、この10年で国会に足場を築いてきた。しかも、いまや日本維新の会の支持率は吉村人気で野党ではトップだ。次の総選挙で野党第一党に躍り出る可能性は十分ある。