だが、この先、エッセンシャルワーカーへの風当たりはさらに強まるかもしれない。精神科医の片田珠美さんはこう話す。
「今後は景気悪化で失業者が急増し、エッセンシャルワーカーになる人が増えると予想されます。労働環境が改善されなければ、燃え尽きて離職する人も増えるでしょうが、職を求める人もまた増える。そうなると、次から次へと“新人”が入ってくるようになる。感染不安や経済的な不安がいつまでも収束しなければ、エッセンシャルワーカーへの差別や暴言などがますます増えるという悪循環に陥る恐れがあります」
事実、現在、コロナで解雇された人や仕事が激減した人がウーバーイーツなどのアルバイトに殺到しているという。
一方で、エッセンシャルワーカーへの感謝を示そうという動きもある。結婚式の中止などでキャンセルされた生花を医療従事者に贈る「キャンセルフラワー」は、配達員やドラッグストアなどにも贈られる予定だ。
毎週金曜日の正午から1分間拍手をして、医療従事者への感謝を表す「フライデーオベーション」も各地で行われている。こうした行為に「癒された」と語る医療従事者がいる一方、冷ややかな声もある。
「うがった見方をすれば、自分が何もしていない後ろめたさを払拭するために行われていると考えられます。拍手の音はほとんどの従事者の耳に入らないし、ただでさえ忙しい医療従事者にとって、生花をもらっても手間がかかるし、衛生的な不安もある。個人的な見解としては、うれしい半面、ありがた迷惑とも思います」(片田さん)
一方、東京清掃労働組合中央執行委員長の中里保夫さんは、「ゴミ袋に感謝の言葉を書き込んでいただくことがある。廃棄するのが惜しくなるくらいうれしくなります」と話す。
感謝を形にするのは急がなくていい。まずは私たちのために働く人々の苦労と献身を知ることが大切だ。
内閣官房によると、エッセンシャルワーカーと呼ばれる人は全国に約2725万人。あなた自身は違っても、家族や友人に思い当たる人が、きっといるはずだ。
※女性セブン2020年6月18日号