抗体検査の血液採取は医療機関で行うのが原則(ABACA PRESS/時事通信フォト)

抗体検査の血液採取は医療機関で行うのが原則(ABACA PRESS/時事通信フォト)

 さて、筆者はこの業者に問い合わせの電話を行なったが、記者であることを伝えた途端に電話が保留になり、その後メールを送ったが返信はない。さらに調べていくと、思わぬところからこれらの業者の「正体」について話を聞くことができた。思わぬところとは、筆者が以前取材した「マスク売人」業界に詳しい、元暴力団関係者の男性だ。

「検査キットは4月の中旬ごろから、中国経由で大量に輸入されています。厳密に言えば採血のための針などがついていなければ医療器具ではないため、誰でも販売することができる、というのが問屋の説明でした。アメリカで先んじて抗体検査が実施されたというニュースに合わせて、日本国内の業者がガッツリ買い占めていたものを一気に吐き出した格好です。ヨーロッパに送られた中国の検査キットが使い物にならないという話もあったし、正直、こうした形で販売されている検査キット自体がホンモノかどうかもわからない」(元暴力団関係者の男性)

 平たく言えば、毎度おなじみ「転売ヤー」たちが、今度は「抗体検査バブル」を見越して検査キットを事前に大量購入、高額転売で儲けようというのである。マスクや消毒液、そして人気ゲーム機など、需要が高まりそうなものを予測し、先に買い占めてしまおうという、あくどい人物たちが、また懲りずにやっているという。

「マスクで失敗したでしょ(笑)。在庫超過のマスクは転売につぐ転売で、右も左も分からないような連中に押し付けられて、そいつらが路上販売して摘発までされました。検査キットも飛ぶように売れる、という見立てだったんでしょうけど全然売れていないようで、マスク同様に、今に路上販売もやるでしょう」

 なんども同じことをいうのは気が引けるが、マスクと同様、出所が不確かなこうした商品は絶対に買わないことである。ましてや命に関わる器具だ。衛生的にも怪しいし、その効果も信頼ができないとなれば、どんな不安に駆られていようとも買うべきではないし、万一購入し検査をしたところで、元々の不安が増大するだけ、なのだ。

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