四つ目は、「新しい価値観」を持つこと。
ぼくの内科外来に、中小企業の社長をしている男性がやってきた。新型コロナの影響で経営がにっちもさっちもいかなくなった。社員の首を切りたくはないし、自分の首を吊るしかない。不安とイライラで眠れないという。
ぼくは、「政府が新しい日常なんて言っているけれど、新しい人間になることを考えてみたらどうか」と提案してみた。
新型コロナの後、経済は悪化し、生きづらい世の中になっていく。でも、考え方を変えてみたら、コロナ後の混沌は、戦後の闇市みたいなもの。変化していく社会をおもしろがれるかどうかだと思う。
もちろん、安定を求めて生きるのもいい。先が見えないときだから、社会の役に立つ人間を目指してもいい。今まで安定を求めて生きてきたなら、今度はチャレンジする人間になってみるチャンスかもしれない。どんな人間になるかは自分次第。
そんな話をしているうちに、男性は笑顔になって、「何でもありなんですね、ちょっと心が楽になりました」と言って、外来を出ていった。
コロナ後の社会は、合理的で生産効率の高い都市的生活様式を絶対視する価値観から、転換が求められていくように思う。世界一貧しい大統領として知られるウルグアイのホセ・ムヒカ氏は最近、こんなことを述べている。