国内

都知事選「小池圧勝」で考えたいポピュリズムへの処方箋

200万票以上を集めた小池氏だが…(時事通信フォト)

 7月5日に投開票された東京都知事選は、小池百合子氏の圧勝で幕を閉じた。学歴詐称疑惑が再燃するなどの逆風もあったなか、前回都知事選に引き続き多くの票を獲得できたのはなぜか。ノンフィクションライターの石戸諭氏が「ポピュリズム」という観点から読み解く(文中敬称略)。

 * * *
 たった4年前の選挙で掲げた公約の多くが未達成のまま、小池百合子が多くの支持を集めたのはなぜか? 私には、この結果が「ポピュリズムの時代」を象徴する現象に思えてならない。

 ポピュリズムとは何か。この問いを巡る学者たちの論争は続いてはいるが、オランダの政治学者カス・ミュデらは、ポピュリズムをこう定義する。

「社会が究極的に『汚れなき人民』対『腐敗したエリート』という敵対する二つの同質的な陣営に分かれると考え、政治とは人民の一般意志の表現であるべきだと論じる、中心の薄弱なイデオロギー」(『ポピュリズム デモクラシーの友と敵』2018年)

 重要なのは、社会が「敵対する二つの同質的な陣営に分かれる」、すなわち「敵」を設定したうえで、自らは「人民の一般意志」の代弁者として振る舞うことだ。
 
 現在の日本で、この定義に当てはまる典型的なポピュリストは、新型コロナ対策において「夜の街」「パチンコ店」などを「敵」に設定する小池だ。私が、近著『ルポ百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』の中で取材した作家・百田尚樹もリベラルメディアを巨大な「敵」「権威」として、「反権威主義」を原動力に変えてきた。

 彼らの言葉の特徴は、自覚的なのか無自覚かを問わず、常に明確なターゲットを設定し、攻撃することにある。多くの人に「私が思っていたことを代弁してくれた」「よくぞ言いにくいことを言ってくれた」と思わせているところがポイントだ。

 私は同書の中で、こうしたポピュリズムの時代の処方箋として、民俗学者の柳田國男の指摘を参照した。柳田は終戦直後の文章や対談で、次のように指摘している。

「あの戦時下の挙国一致をもって、ことごとく言論抑圧の結果と考えるのは事実に反している。利害に動かされやすい社会人だけでなく、純情で死をも辞さなかった若者たちまで、口をそろえて一種の言葉だけをとなえつづけていたのは、強いられたのでも、欺かれたのでもない。これ以外の考え方、言い方を修練する機会を与えられていなかったからだ。こういう状態が、これからも続くならば、どんな不幸な挙国一致がこれからも現れてこないものでもない」(野原一夫『編集者三十年』より)

関連キーワード

関連記事

トピックス

元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカル
【ニコラス・ケイジと共演も】「目標は二階堂ふみ、沢尻エリカ」グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカルの「すべてをさらけ出す覚悟」
週刊ポスト
阪神・藤川球児監督と、ヘッドコーチに就任した和田豊・元監督(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督 和田豊・元監督が「18歳年上のヘッドコーチ」就任の思惑と不安 几帳面さ、忠実さに評価の声も「何かあった時に責任を取る身代わりでは」の指摘も
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
〈2025年追悼・長嶋茂雄さん 〉「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 日本中を明るく照らした“ミスターの言葉”、監督就任中も本音を隠さなかった「野球への熱い想い」
週刊ポスト
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン