芸能

米津玄師の魅力を菊地成孔氏が分析「超欧米化の極例」

新作アルバムはミリオンヒット(公式HPより)

 シンガーソングライターの米津玄師(29)による2年9か月ぶり5枚目のアルバム『STRAY SHEEP』が国内外で大きな反響を巻き起こしている。CD不況と言われる今の時代に、なぜ彼は世界中のリスナーを虜にすることができたのだろうか。

 8月5日にリリースされた同アルバムは、初週のオリコン週間アルバムランキングで88万枚の売り上げを達成。同じくオリコンの週間デジタルアルバムランキングでは史上初となる初週10万ダウンロード超えを果たしている。さらにiTunesのリアルタイムランキングでは発売直後に日本を含む24か国・地域でランクイン。異例の大ヒットを記録していると言っていいだろう。

 TBS系のテレビドラマ『アンナチュラル』のテーマソングとして書き下ろされた「Lemon」や、子供から大人まで幅広い世代を魅了した「パプリカ」のセルフカバーなど、米津の人気を決定づけた代表曲が数多く収録されていることもヒットの要因であるには違いない。だが、アルバムにはライト層のリスナーだけでなく、コアな音楽ファンをも唸らせる仕掛けが随所に施されているのである。

 なかでも今回のアルバムの大きな特徴となっているのは、米津と同世代であり現代クラシック音楽の分野で活躍する作曲家・坂東祐大(29)が大半の楽曲で共同アレンジャーとして参加していることだ。これまで作編曲は米津自身が手がけることが多かったため、新たな挑戦に踏み出したと言える。

 また「馬と鹿」での緻密かつ壮大なストリングスのオーケストレーションをはじめ、坂東が主宰するアンサンブル集団Ensemble FOVEが参加していることも見逃せない。ボーカルにデジタルクワイアと言われるエフェクト(音響効果)を施した幻想的な響きから幕をあける「海の幽霊」でも、ストリングスがポスト・クラシカルなサウンドを生み出すことに貢献している(*注)。

【*注:ポスト・クラシカル/近年、世界中で注目を集める音楽ジャンルの一つ。大まかには、伝統的なクラシック音楽に電子楽器などを取り入れる演奏形態や楽曲などを指す】

 さらに米津にとって初の試みでもあるホーンセクションを導入した「感電」では、楽曲の後半で気鋭のジャズ・ドラマーの石若駿(28)によるテクニカルでフリーな演奏が披露されるなど、クラシックだけでなくジャズに通じる楽曲も収録されている。「迷える羊」で繰り返されるピアノ・フレーズも、現代的なジャズの香りを漂わせている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン