とはいえ、優に100を超えるであろうギャグを作り続けるのは至難の業だ。今回の撮影時も“ぱっくりピスターチオ”“屈伸ついでにレディー・ガガ”“よろけたついでに由美かおる”など、床に座るのもいとわず、それらのギャグを披露してくれた。思わず取材を忘れて笑い転げてしまったほど。
その独特のギャグセンスも注目されているが、“キてる感覚”は本人にあるのだろうか。
「“キてる”なんて、本当おこがましくて思っていません。ぼくが仕事をもらえているのは、結局、AD時代に『いつか一緒に仕事しましょう』と言っていたスタッフが、ディレクターになったり、プロデューサーになったり、周りがどんどん偉くなってくれてるから。
それに、キャイ〜ンやネプチューン、くりぃむしちゅー、ナイナイなどの同期が冠番組をするようになって呼んでくれるのも大きい。彼らの枠の取り合いレースは大変でしょうが、ぼくは友達の家に遊びに行くような感覚です。ちょっとしたトークという焼き菓子を持って(笑い)」
と、お菓子を差し出すような真似をする。先に、関根勤らが語ったという「そのままで飯尾はおもしろい」という言葉を紹介したが、それをいま、多くの人がようやくわかってきたのだろう。
生き馬の目を抜く、といわれる芸能界で、他人を蹴落としてのし上がるのではなく、偉くなった仲間や周りの引き立てでいまがある、と言い切る謙虚さ。この低姿勢こそ、コロナ禍でギスギスしがちな日本社会に、必要とされる力なのかもしれない。
座右の銘はと尋ねると、「“人に甘える”です!」と即答しニッコリ笑う。
「目指すはピクルスやパセリのような何気にいる芸人です。ぼくは自分にできることをやるだけやったら、あとは丸投げ。自分のギャグが多少、生半可でも周囲が拾ってくれたり、被せてくれたり、時には救助ヘリも飛ばしてくれる。ひとりじゃ何もできないから。だからぼくは、人に甘えて生きていくことにしたんです」
人に甘えられるのも、周りへの絶大な信頼があってこそ。肩の力を抜いて自然体で生きる姿は、甘えたくなる「いい男」そのものでした。
【プロフィール】
飯尾和樹/いいおかずき。1968年12月22日生まれ。東京都出身。浅井企画に所属し、お笑いコンビ「チャマーず」、「La.おかき」(ラ・おかき)を経て、2000年にやすと「ずん」を結成。自宅では家事を分担し、気分転換に料理は7~8割担当している。好きな料理はカツカレー。嫌いな食べ物はカリフラワー。趣味はゴルフ、料理、物件選び。エッセイ『どのみちぺっこり』(PARCO出版)発売中。
撮影/森浩司
※女性セブン2020年9月17日号