とはいえ、それは鹿児島での話。全国的に見れば、合理化・経済性、そして時代の流れもあって各地で運行されていた花電車はひっそりと姿を消している。現在、全国で残っている花電車は少なく、出番も数えるほどしかない。
東京都を網の目のように走っていた都電は、かつて頻繁に花電車を運行。都電が荒川線だけになった後も、それは変わらなかった。しかし、いつの間にか荒川線で運行されることはなくなった。
花電車を懐かしむ年配者は多い。惜しむ声が後押しして、東京都交通局は2000年代に花電車をいったん復活させたことがある。そのときに再現された花電車は、車体にフィルムを貼っただけの簡易バージョンだった。
フィルムを貼っただけの花電車では、華やかさに欠ける。そのため、沿線住民や古参の都電ファンを落胆させた。こうした経緯もあり、2011年の東京都交通局発足100周年の節目に、きらびやかな装飾と細工を施した花電車が登場した。
そのほかにも函館市電や広島電鉄などが花電車を運行しているが、総じて花電車の出番は減少している。そして花電車を知らない世代が増え、いまや存亡の危機に瀕している。
毎年運行している鹿児島市電の花電車は、かなり年季が入っている。それだけに部品が摩耗しても交換できず、メンテナンスは難しくなっている。鉄道ファンの間では、「そろそろ引退では?」という憶測も流れていた。そして、ついに今年のおはら祭を花道に引退することがリリースされた。
「現行の花電車は、今年の運行が最後になる予定です。来年度からは、新しい車両で花電車を運行する予定にしています。しかし、それはあくまでも予定です。来年度、これまでの車両で花電車を運行するか、それとも新しい車両で運行するのか、実ははっきりと決まっていないのです」(同)
鹿児島市電の前身である鹿児島電気軌道が、路面電車の運行を開始したのは1912年。つまり、再来年の2022年は鹿児島市電発足100周年にあたる。記念すべき年に運行される花電車は新型車両になるのか、それとも慣れ親しんだ既存車両になるのかはわからない。