今年、傘寿を迎えたジャーナリストの鳥越俊太郎氏(80)は、こんな心境の変化があったという。
「私が思うに、現役か、そうじゃないかが『おじいちゃん』の境目だと考えます。現役を終えて、家族のなかで皆に敬愛されているという存在が『おじいちゃん』だと思います。私の場合、コロナ前までは講演などの仕事があって、まだまだ現役だと思っていましたが、コロナ禍で仕事がなくなって、今、社会的には何にもすることがない。その最中に、『もうおじいちゃんだな』と思いましたし、他人からそう呼ばれても、『そうだろうな』と受け止めるでしょうね。もちろん、リモートでの講演などが再開予定なので、現役に戻ればそうは言わせませんけどね(笑い)」
見た目か、体力か
鳥越氏は、肉体的にも「おじいちゃん」の境目を痛感することはあると言う。
「『船頭さん』という童謡の歌詞に『今年六十のお爺さん』というフレーズがありましたが、今は平均年齢も延びたから60代は元気です。でも70歳を超えると“おじいちゃん度”は上がるんです。体のあちこちが痛くなりますし、内臓も弱くなってがんなどの病気も患います。私は鏡を見ても皺も少ないし、見た目はまだ若いつもりです。でも80歳だからわかりますが、体はボロボロです。老化を受け止めるのは心理的にも精神的にも一概には言えませんが、やはり徐々に自覚していくものです。複雑ではありますが、私もおじいちゃんと言われても仕方がないと思います」
老いたと自覚しても、他人からの呼ばれ方によって受け止め方は変わってくるようだ。前出の弘兼氏は言う。
「パナソニックグループ創業者の松下幸之助さんは晩年も『おじいちゃん』とは言われず『松下幸之助翁』と呼ばれていました。『翁』が、年寄りとバカにした感じもなく敬称として成立していましたね。
私の場合は、若い女性からなら『おじいちゃん』より『くそジジイ』と呼ばれたほうが嬉しい。『おじいちゃん』だと弱々しい感じがしますが、『くそジジイ』だとまだ色気があって、『私に迫ってくるこのくそジジイが』というニュアンスだから、元気が出ます(笑い)」