クラウンSUVは「広大なリムジン」?
そのクラウンのSUVバージョンがどのようなクルマになるかは不明だが、中日新聞の報道どおり3列シートSUV「ハイランダー」をベースとするのであれば、2.85mというロングホイールベースの背高ボディを生かし、2列シートの広大なリムジンSUVにするのではないかというのが筆者の想像だ。クラウンという名前は残るが、海外にも販路を求めるということなので、全幅1.8mはもはや継承されないだろう。
問題は大衆車をベースに高級車を作れるかどうかだが、これはさして心配なさそう。
TNGAアーキテクチャは改設計についてかなりの融通が利くように作られているようで、ハイランダーのプラットフォーム「GA-K」も下は大衆セダンの「カムリ」から上は高級セダンの「レクサスES」まで、幅広く採用実績がある。トヨタの開発力をもってすれば遮音をちょっと頑張り、足回りの可動部品に良いものを使えば、高級SUVに仕立てることはたやすいことだろう。
課題は中国を除く海外ではほとんど無名のクラウンの名を冠した高級SUVを、新たなトップオブトヨタとしてどう特徴づけるかということにある。
トヨタは元来、クルマを飾るのは得意なメーカーだ。世の中では高級といえばシックと捉えられがちであるが、たとえばアメリカのストレッチリムジンやロールスロイスのようなプレステージクラスでは、悪趣味というくらいきらびやかに内装を飾り立てるのが常。トヨタは三河の企業だが、尾張名古屋に隣接しているからか、そういう飾り立てについては非凡なものを持ち合わせている。
「露骨に出し過ぎるとそれはそれで失敗するかもしれませんが、変に世の中で言われているような趣味の良さに引っ張られると、トヨタDNA的には特徴を失って没個性的になってしまうのではないかと思います。
おそらくクラウンSUVは確固たる世界戦略の一環で生まれるわけではなく、クラウンの名を消さないために作られ、エクスキューズとして海外販売を標榜しているだけのように思います。ならばいっそ、自分たちの思うようにやってみればいい。
ミニバンの『アルファード』のように、アジア圏で超高級車扱いされるような日本発のモデルに化ける可能性だって決してゼロではないのですから」(前出のトヨタOB)
世界の自動車業界が激変の渦中にある中、勝ち組への道を模索するトヨタ。クラウンのSUV化が吉と出るのか凶と出るのか、その行方が興味深い。