◆ 『恋する母たち』(TBS系)
杏(木村佳乃)と斉木(小泉孝太郎)のカップルは再婚-離婚とすったもんだしたあげく、「建築関係の仕事を一緒にやっていく」良きパートナーとなり一件落着。そんな解決方法があるのなら、こうもグダクダしなくてよかったのに。
一方、キャリアウーマンの優子(吉田羊)の恋愛も、赤坂(磯村勇斗)が結婚式場から抜け出しタキシード姿のまま駆けつけて、二人は抱き合ってハッピーエンド。これって映画『卒業』の焼き直し? 結婚相手を式場に置き去りにできるくらいなら人間関係の葛藤なんてそもそも存在しない?
コロナ禍、政治のリーダーシップに深い失望感が漂い、先が見えない不安に包まれている日本。だから「ドラマくらいはハッピーエンドで終わらなくては」「肯定的なトーンで締めくくらなくては」という、ある種の強迫観念が各局の制作サイドを襲ったのか。「スカッとしない結末や複雑な幕引きは、今の状況下で視聴者にウケない」と揃って判断したのでしょうか? もしそうであればみな似たような結末になってしまうのは自然なこと。
変化していく状況に振り回されず作品性を保つためには、走り出す前に構成をしっかりと固めて着地を練り上げておくことがいかに大事か。そう、ドラマにも「エクジットストラテジー/出口戦略が大事である」ということを浮き彫りにしたのが、コロナの年の12月だったのかもしれません。