報道陣に公開された成田空港「PCRセンター」の入り口(時事通信フォト)

報道陣に公開された成田空港「PCRセンター」の入り口(時事通信フォト)

 南ウイングも似たようなもので、師走の成田空港とは思えないほど人の少ない景色が広がる。メキシコシティー、杭州、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴ、ニューアーク、グアム、シンガポールとそれぞれ出国手続き中。シンガポール行きを最後に南ウイング発着便は18時10分の武漢行き以降すべて欠航とのことで、17時の杭州便に乗らなければ中国人は帰れない。それにしても数少ない中でも中国人とベトナム人は目立つ。日本がいかに購買力だけでなく、彼らの労働力に頼っていたかを思い知らされる。唯一、夜19時55分発のハワイホノルル便(ターキッシュ)が第2ターミナルから飛ぶらしい。数少ない日本人はこれに乗るのだろうか、ハワイは最高だ。なんだか羨ましい。2019年までは年末年始のハワイ便なんか予約をとるだけでも大変、金額もべらぼうだった。今や昔である。

誰も乗っていない車両が2両

 到着ロビーに降りてみる。14時以降はニューアーク、ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコ、グアム、ロサンゼルスとアメリカからの便が多い。午前中はアムステルダムからもKLMが来たようだ。あとはジャカルタ(インドネシア)。全世界からの日本への新規入国停止と菅義偉内閣総理大臣は発表していたが、あくまで新規入国であり、これまでも緩和していた中国や韓国など11ヶ国および地域のビジネス用途の往来は除外している。なんだか一部の報道機関も含め、実態をごまかしているなあというのが率直な感想だ。

「全世界からの日本への新規入国停止!」なんて聞くといかにも空港封鎖かと思わせるが、以前に比べれば少ないとはいえヨーロッパを中心にごく一部の国を除けば航空便は到着しているし、到着ロビーにアジア系を中心に外国人の集団がいる。中国も韓国も、あちらは厳戒態勢なのに日本は口だけで事実上の入国を認めている。筆者も正直、この事実を目の当たりにして拍子抜けしてしまった。

 それにしても外国人、ソーシャルディスタンスの印も無視して10人以上が長椅子に身を寄せて座って話し込んでいる。職員の誰が注意するでもなく野放し、対コロナの最前線たる国際空港とは思えない状況だ。厳戒態勢の他国の空港、たとえばインチョンやヒースロー、シャルル・ドゴールでこうはいくまい。

「9号車、10号車はいまのところ誰もいませんよ、どちらにします?」

 帰りは成田エキスプレス。みどりの窓口で「なるべく人の少ない車両」と告げたら誰も乗っていない車両が2両もあった。JRも大変だ。空港第2ビル駅で3名ほど乗ってきたが静かなもの。入国者は公共交通機関を利用しないよう要請されているがどうだろうか。うかつなことは言えないし声をかけたら無視されたが、日本人とは思えなかった。中国や韓国など、緩和措置の継続されている国からの入国者に対してはあくまで要請、空港から駅に降りる階段に見張りの職員はいたが、抜け道はいくらでもありそうだ。

 政府は2020年の3月から「水際対策の抜本的強化」を謳っていた。「新型コロナウイルス感染症に対する水際対策の抜本的強化に向けた更なる政府の取組」として厚生労働省が発表している。

「全ての国または地域を出発し、日本に到着する航空機及び日本の港に入港する船舶に乗って来られた方については、検疫法に基づく隔離(入院)・停留が必要となる場合があるほか、検疫所長が指定する場所(自宅等)において14日間の待機をお願いすることとなります。また、ご自宅等へは公共交通機関を使わず、ご家族やお勤めの会社等による送迎でのお帰りをお願いすることとなります。 加えて、入国した日の過去14日以内に入管法に基づく『入国拒否対象地域』に滞在歴のある方については、全員にPCR 検査が実施されます。そのような状況を踏まえたうえで、渡航、帰国を検討いただくようお願いします」

 としているが、正直、成田空港内を半日歩く限りどこもかしこも野放しとまでは言わないが牧歌的な雰囲気に満ちていた。筆者を含め様々な国の人が少ないながらも空港内を歩いていたが、予想していた緊張感のある水際対策の最重要施設という雰囲気ではなかった。

「静かだからここで仕事してるんです。こんなに便利なところないですから」

 オフィス家具メーカーが提供しているモバイルスペースにいる男性は空港と関係ない成田市の住民であった。別に誰が出入りしても構わないのだろうが「検疫の最前線」である国際空港とは思えない長閑さだ。到着ロビーにアジア系外国人の集団も2組ほどいたが密であってもあちこち動き回っても注意されることはなかった。そもそも誰が帰国者で、誰が出国者で、誰が空港の目的外利用者かもわからない。なぜなら空港は出入り完全自由、2020年末に帰国者が要請を無視して公共交通機関を使うことが問題となっていたが、この空港の体制では無視も簡単、先にも書いたがしばらく空港内でやり過ごして駅に降りればいいだけだ。誰も声などかけられてなかった。筆者もなにか言われるかと思ったが何もなかった。

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