以上が全世界から日本への新規入国停止が始まった2020年12月28日の成田空港である。この措置は2021年1月31日まで、あからさまな春節目当てであることは明白だ。中華人民共和国における2021年春節の祝日は2月11日から2月17日、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会は菅義偉総理に当初2021年1月末までだった「GoTo トラベル」の延長を陳情、ゴールデンウィークまでの延長が決まった。そして今回の新規入国停止でも中韓からの入国緩和は継続。全国旅行業協会会長にして日中友好団体「日本ボアオ会」創立会長、日韓議員連盟常任幹事の二階俊博自民党幹事長の影響力を思い知らされる。
そういえば、成田空港の大型スクリーンのあちこちに映し出される映像は2021年東京オリンピックのPR映像だった。春節はともかく、最終的な目標は「コロナ禍でもオリンピック」だろう。国民の命より中国人の金、国民の命よりオリンピックが日本政府の本音だろう。それを支持する「命より経済」という国民も多い。日本政府は当初予定通り、オリンピックのため責任者を除く医療従事者5000人を原則無償で確保する計画、これが我が国の本心だ。
全世界から日本への新規入国停止と言いながら入国緩和は継続 ―― この矛盾まみれの政策、矛盾を背景に深刻化する「命か金か」の分断。これがコロナ対策に遅れを取り続ける日本政府の現実である。この国のあからさまな春節やオリンピック目当ての強硬策、悲しいかな、コロナがおさまらない限り続くのかもしれない。
【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。2018年、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社)、『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)他。