発表後の2か月強で「新センター」を披露
一方、ファン以外の視聴者は、「乃木坂46にこんな子がいたんだ」「センターが凄く似合っている」などと新鮮な驚きを感じていました。前述したように、発表からリリースまで2か月あまりの時間をかけて「新センター・山下美月」を見せたことで、「まいやん(白石さん)が卒業してどうなるかと思っていたけど、この子たちならいけるかも」などと思わせることに成功したのです。
山下さんは昨年12月2日から今年1月27日まで『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)の水曜シーズンレギュラーとして出演していました。生放送のスタジオでコメントやリアクションを繰り返したほか、芸人の阿佐ヶ谷姉妹や和牛などと体当たり系のロケに挑戦。これまで接点のなかった時間帯の視聴者層に顔と名前を売るとともに、貴重な経験を積みました。今回の初センターをきっかけに、ますます個人での番組出演が増えていくのではないでしょうか。
コロナ禍でライブや握手会などの開催が難しいことから、アイドルを取り巻く状況は厳しさを増しています。また、山下さんら3期生にとっては、偉大な1期生たちと比べられる上に、女性層をがっちりつかむNiziUなどの新たなライバルも気になるところでしょう。白石さんの卒業にコロナ禍やNiziUブームが重なったからこそ、新センターの山下さんには救世主としての活躍が期待されているのです。
今年、乃木坂46は結成10周年であり、その意味でも節目の年。AKB48、モーニング娘。などトップアイドルのまま世代交代を成し遂げたグループはいないだけに、「センターらしい新センター」と言われる山下さんへの期待は計り知れないものがあるようです。
ここまで読んでもピンとこない人は、山下さんがセンターを務める乃木坂46を一度見てください。その姿を見たら、「かつての前田敦子に似ているのか」「センターとしてふさわしい人材なのか」「世代交代はうまくいきそうか」などの答えがおぼろげに見えてくるのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。