ちなみに東北新社の政治献金状況を調べると、菅の選挙区である自民党神奈川県第二選挙区支部への献金が始まった年が、第二次安倍政権のスタートした2012年だ。創業者である生前の植村伴次郎から150万円、息子の徹も100万円を献金し、これ以降、献金は2018年まで計500万円に上る。また植村親子は、安倍にも同じように500万円を献金している。
かたや、ぐるなびの滝関連の政治献金は、菅の衆院初当選した1996年から2012年まで合計280万円ほどで、そこから先は見あたらない。だが、むろん滝と菅の縁が切れたわけではない。滝が率いるぐるなびは、首相肝煎り政策の「Go Toイート」の受け皿となり、一挙に業績を回復させた。飲食料金の割引制度「Go Toイート」はぐるなびをはじめとしたネットサイトで予約すればポイント還元される。おかげで秋以降利用客が急増したのである。滝本人は菅政権が発足するや文化功労者に選ばれてもいる。
東北新社は菅親子と滝の関係が事業に与える影響について、「関係はございません」(広報室)と回答。ぐるなびは「承知をしておりません」(広報グループ)とのことだった。「ネポティズム」の根は深い。
【プロフィール】
森功(もり・いさお)/ノンフィクション作家。1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。新潮社勤務などを経て2003年よりフリーに。2018年、『悪だくみ―「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。近著に『鬼才 伝説の編集人 齋藤十一』『菅義偉の正体』。
※週刊ポスト2021年2月26日・3月5日号