林:不動産屋さんのね。山村さんとは若い頃に仲よくしていて、旦那さんともお目にかかったことがあるのでやっぱり寂しいだろうなって。人生100年時代になって、みんなすごく長生きするようになったじゃない。そうなると、70、80になった旦那をいらないとポイ捨てするわけにはいかないですよね、それは。うちにもさ、本当に気がおかしくなりそうなくらいに、頑固で嫌なじいさんがいるんだけど(笑い)。
柴門:どんな旦那であれ(笑い)、ひとり人手があると思ったら、まったくのひとり暮らしよりはメリットがあると思うんですよね。先日も孫の子守りと犬の散歩が重なっちゃって夫(漫画家の弘兼憲史さん)にどっちかお願いと頼んだら、“おれは犬のうんちを拾うのは嫌だから、孫の方を見る”って(笑い)。ただどうしていいかわからないから手が出なくて、孫が遊びながら転がっても横で見ていただけだったんだけど。
林:おじいちゃんとしては、孫は見ているだけでかわいくてしかたがないんでしょうね。この年になって夫婦の関係を考えてみると、結婚のときに「健やかなるときも、病めるときも」と誓うのは、文字通りに病気のときだと思っていたけれども、病める=ぼけるときなんだろうなと思うようになったんです。ぼけなんかもうじきそこにきているときに、子供も大きくなりましたからといって夫を切り捨てることは、人間としてどうなんだろうかって。
柴門:だから『恋母』でまり(登場人物の蒲原まり。専業主婦。丸太郎に口説かれる。ドラマ版では仲里依紗が演じた)が落ちぶれた夫を見捨てないのは、人情なんです。人としての道ですね。
林:あれはよかった、任侠だね。
柴門:そう、任侠。情なんです。
林:アメリカなんかだと愛情がなくなればすぐ離婚だけど、日本では情でいままで結びついてきたから。道端でぼけたおじいさんと散歩しているおばあさんの姿なんかを見ると、あぁいいな、と思いますね。