当せん金は本当に税金が一切かからないのか
宝くじについて、当せん金は所得税非課税なので「当せんした人は全額を受け取ることができる」という話がよく知られている。確かに、当せん金付証票法では、「当せん金付証票の当せん金品については、所得税を課さない」(第13条)と規定されている。個人住民税についても課税対象の所得とみなされないため、課税されない。
ただし、当せん金に税金が一切かからないというわけではないので、注意が必要だ。
たとえば、「宝くじに当たったら半分あげるよ」といった冗談を家族に言う人は多いと思われるが、もし本当に当せんして、当せん金を家族に分配すると、その家族には贈与税がかかる。
また、宝くじを仲間と共同で購入する「グループ買い」の場合、代表者が当せん金全額を一旦受け取り、あとで共同購入したメンバー各人に分配すると、これも贈与税の対象となる。
このようなケースでは、当せん金を購入者全員で受け取り、受け取った全員が「当せん証明書」をもらっておいたり、代表者が委任状を用意しておいたり、といった事前準備をしておく必要があるようだ。詳細については、事前に税金の専門家に相談しておいたほうがよいだろう。
また、法人が購入した宝くじが当せんした場合、当せん金は益金に算入されて、法人税がかかる。法人税は非課税とはされていないためだ。やはり注意が必要といえるだろう。
警察に届けた遺失物の宝くじが当せんしていたら?
最後に、当せん金付証票法の条文の中に、一風変わった規定があるので紹介しよう。
「当せん金付証票の当せん金品の債権は、これを行使することができる時から1年間行使しないときは、時効によつて消滅する」(第12条/特別措置)
つまり、宝くじの当せん金の時効は1年とされていて、支払期日を過ぎると、受け取ることができなくなるわけだ。
そこで、もし、当せんしている宝くじが遺失物として警察で管理されている場合、そのまま時効を迎えると、当せん金は受け取れなくなる。こうした事態を避けるために、「警察署長は、(中略)時効により消滅するおそれがある場合に限り、(中略)当せん金品の支払又は交付の請求をしなければならない」という規定がおかれている。
この条文は、第11条の2 第2項として規定されている。「第11条の2」という条番号からわかるとおり、これは、1948年のこの法律の制定時からあったのではなく、1954年の法改正時に追加された条文だ。その条文追加の経緯を調べてみると、当時、話題になった1つの事件が浮かんできた。