細井くん、話がずれるのはいつものことだがいいところはついている。2869万人を動員、興行収入396億円という日本の映画史上、空前絶後の大ヒット作『鬼滅の刃』でもクラスターなど発生していない。それでもシネコン各社は映画館の書き入れ時であるゴールデンウィークの休業を決めた。これは美談だろうか。筆者は国と自治体になめられているとしか思えない。これは百貨店もしかり。いっぽう、それほど体面を気にしない業種は強行する。正直者がバカを見るのが現状だ。
そのくせオリンピックは「問題ない」らしい。オリンピックのために今後、海外から9万人の選手関係者が押し寄せるというのに。死者30万人、一日で4000人がコロナにより死んでいるブラジルからも、それ以上の50万人死んでいるアメリカからも、変異株を抑え込むために自粛しろ、協力しろ、我慢しろと言いながら、その元凶の国々から短期間に9万人も入国させる。聖火リレーは現在も元気に疾走中、7月まで日本中を駆け回る。
「飲酒禁止なんてエビデンスないでしょう。ランチはどうなんです? 昼のランチなんか同じように人でいっぱいですよ」
まさか家庭内に自粛警察がいるとは
筆者は以前から気になっていたが、オフィス街や歓楽街のランチ時は大盛況だ。某大手自動車工場にほど近い定食屋、5人以上どころか10人規模で連れ立って工員が談笑しながら入って行った。会社はちゃんと指導しているのだろうか。ラーメン屋ではスーツ姿6人が昼からランチで一杯なんて光景も目の当たりにしている。筆者の友人の女性に話をきくと「ランチ時くらいしか思いっきりみんなで食べたり話したりできないから」らしい。
彼女は一人暮らしだが、独身者もこのコロナ禍の自粛は辛いだろう。平気な人もいるだろうがさすがに少数派、そんな孤独を愛する人ばかりではない。そもそもテレワークで構わない業種でもいまだに移行できていない化石のような会社も悪い。その女性もコルセン勤め、大手広告代理店が請け負う国民年金の督促をしている。「意味ないけど仕事なんで」とは彼女の言だ。
「何が正解かなんてわかんないのに闇雲に悪役を作ったって、むしろうちの妻みたいな自粛厨を増長させるだけですよ」
インターネットでたびたび使われる中毒者、偏愛者に対する蔑称「○○厨(ちゅう)」には、これまで出会いや不謹慎など様々なことにこだわる極端な人への揶揄が込められてきた。今度は自粛に執着する人たちの出現である。実際に細井くんの妻が自粛厨かどうかは知らないし、それは夫婦で話し合ってもらうしかないが、結局のところ、筆者が度々引用するゲーテの格言「砂漠のインド人は魚を食わぬ事を誓う」なのだろう。自分に関係ないことにはひどく道徳的になるのが人間だ。そして自分に有利な時しか声なんか上げない。家庭もまた、社会の縮図だ。
「うちは極端かもしれませんけど、庭で飲んだらいいんですかね、そもそも外で飲むって本当に感染拡大の原因なんですか?」